第3話

窓から朝の光が差し込む。その光は、カウンターに伏せてあるコップを、きらりと輝かせた。牧野要は、お店の椅子を整えながら、外を眺めた。

 夏も終わり、秋も中頃に差し掛かる季節。店の前の並木道は、地面まで黄色一色に染まっていた。遠くの山は、赤に黄色に緑に。色鮮やかに染まっている。

 「今日もいい天気だな。」

 そう話しかけた相手は、要の足元で毛づくろいをする三毛猫、ハルだ。ハルは、にゃあと、面倒くさそうに返事をした。

 「さてと。」

そう言って要はキッチンに入る。

まず初めに冷蔵庫の在庫を確認する。先程仕込んだフォンダンショコラにチーズケーキ。焼きプリンに珈琲ゼリー。付け合わせのフルーツを買ってくればいいかな。そう呟きながらメモに葡萄、和梨、洋梨と書き記す。

 次は珈琲豆の確認。鮮度が命のコーヒー豆は、近所のお得意さんから、適宜取り寄せている。生豆のまま取り寄せて、焙煎は煎りたてのコーヒーを提供したいので、一日に少量を何回も何回も行う。

 マンデリンがなくなってるな。週末に向けて少し多めに仕入れておこうかな。洋梨の続きにマンデリンと書き記す。

 最後にジャムとパテ、野菜などの具材の確認をする。要はお店でサンドウィッチを提供している。テイクアウトにも対応しており、通勤の最中に立ち寄り、お昼ご飯として、サンドウィッチを買ってくださるお客さんが多い。また、ジャムはお土産として販売しており、これがかなり人気の高い商品となっている。

「あ、昨日瀬田さんがプレゼント用って言ってカボチャのジャムたくさん買ってくれたんだった。急いで作らないと。」

 そう言いながら他の食材を確認し、かぼちゃ、挽肉、茄子、玉葱などと書き記して、要はコートを羽織った。

「じゃあ、ハル、お留守番よろしくね。」

 ハルは任せなと言うように返事をした。

 お店の入り口から外へ出ると、外は思ったよりも寒かった。要は足早に車へ向かう。

 車の戸を開け、エンジンをかける。そして、スマートフォンを車と接続し、大好きな作曲家、澤田孝介の曲を流す。

 「よし、今日も一日、頑張るぞ。」

 要はアクセルを踏んだ。

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