第1話 スーパー問題児
それは俺が通っている高校の名前だ。
街の中心部から少し離れた場所で、坂の上に校舎を構えるこの学校は、幾らかの特徴がある。
部活が強い、だとか、勉強に優れている、だとか、そんなシンプルな特徴ではない。寧ろここら辺は普通なのだ。
では、この学校には何があるか?
この学校には、「特別監視生徒」と呼ばれる生徒が、約200人程いる学年の中に数人存在する。そこに普通科、体育科、美術科とうちにある3つのコースは全くと言っていいほど関係ない。
そして、特別監視生徒、
「重度の問題児であること」
ただそれだけだ。
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「では、本日から第2学年としてしっかりと勉学に励んでください。」
「はい。今後もお願いします。」
俺の新学期は、40越えたおばさんの校長先生との対面から始まった。
「というより、流石にまだまだこんなことが増えるようだったら...分かってますね?それと、今まで何度ここに来たか数えてみてください。」
新年度が始まって3日後、俺はこの日、2年生となって初めて登校した。
とはいえ今は放課後。クラスにも向かっていなければ授業も受けていない。1人別室で1日過ごしたわけだ。
というわけで、今いる場所は、校長室。
春休み中に起こしてしまった暴力事件の停学が開けた訳で、学校に来た訳だが、そりゃ確かに校長室に行かないはずがないよな...。
はぁと溜息をついて、これまで校長室に呼ばれた数を指折りで数える。
これまでも似たような事件が2、3回。学校で人殴ろうとして止められたのが4回くらいと...あと面談でも来たっけ?それ入れたら怒られそうだけど。
「...10回弱、くらいっすかね?」
「そんなところでしょう。流石に多すぎだと思いませんか?まだ入学から1年ですよ?」
「返す言葉もありません。」
ぐうの音も出ない正論に肩をすくめる。
とはいえ、俺も無差別に暴力を奮った訳では無い。街で不良に遭遇して返り討ちにしたとか、吹っかけられた暴力を倍にして返した、とか、過剰防衛の延長線みたいなものだ。
最も、学校側としては問題を起こされる事自体に問題を感じてるわけだ。
そこに正義感なんてものはない。義務なのだから。
「あなた、成績はさほど悪くないので、こういうこと、もったいないんですよ?」
「別に俺も、やろうとしてやってるわけでもないですよ...。」
ついでに言うと俺は文系だ。そのせいか数学理科系統は毎度赤点ギリギリなラインなのだ。去年はたまたま出なかっただけで。
決して成績もいい訳では無い。
「ふぅ...。という訳で、お話は以上です。あとで職員室西原のところに行くように。渡す書類があるので。」
ギシッ、と椅子をならし、校長は最後の言葉を告げる。なるほど、この分なら当面は退学の心配はなさそうだ。
「では、失礼します。」
俺は心無く校長室のドアを閉めた。
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冷たいリノリウムの床をコツコツならし、フロアの違う職員室へと向かう。
「西原先生はたしか...職員室だから...」
ドアの前に張ってる席表の紙とにらめっこをする。
すると、タイミングよく職員室のドアが開いた。
「おっ?」
「あ、どうもです西原先生。」
「用事の方は校長から聞いてるよな?...ま、長話になりそうだからとりあえず入って。私のデスク、入ってすぐ左だから。」
そう言って西原先生は先に職員室へと戻って行く。それについて行くように、俺も職員室へと入った。
西原先生。本名、
髪はショート以上セミロング未満程度。担当教科はたしか...国語?だったかな。そこら辺は学年会が違ったので知らない部分はある。今年はどうか知らないけど。
年齢は不明にしているそうだが、噂では三十路いったくらいと聞いた。本人は気にしてるようだが、俺からすれば大人の貫禄がついているように見える。正直いってかっこいいまである。
あと、もちろんの事独身である。
ただ、本人の前でそんなこと言ってしまったら、多分3度くらいは平気で殺されるだろう。
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ついて行った先は、応接間、みたいなところだった。そこにデスクが1つ。あとは来客用ソファーが2つほど置いてある。
俺はソファーに腰掛けて、先生の話を待った。
けど、何の書類だ?
退学は当分はないと見込んでる以上、ほかの見当が全くつかない。
そんな感じでうーんと頭を悩ませてると、書類を持ってきた先生がやって来る。
そしてそのままデスクの方の椅子へと座った。
「さて、校長からなんて聞いた?」
「えっと、確か渡す書類があるから西原のところへ行けと...」
「まあ、実際そうだしな。...ほれ、受け取れ。」
そう言って先生はいくつかの書類が入ったであろう封筒を俺に投げ渡した。
「おっとと...。なんすかこれ。」
「新2年になるスーパー問題児こと君へ、私からプレゼントだ。...あと、君のクラス担任私だからくれぐれもよろしくな。」
「はぁ...。」
そう言って封筒を開け、ガサガサと中を漁り、紙を取り出す。
そうして最初に引き上げた紙に、俺の体は硬直した。せざるを得なかった。
そして先生は何故かにやりと笑って俺に言う。
「それと、だが。ようこそ。特監生の世界へ。」
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