第46話 茶番

 俺たちが来た場所は病院だった。

 俺はあの男性医師に話があった。

「先生、協力してくれませんか?」

「……」

 医師は事情を聞くと、しばらく考え込んでから言った。

「……しかしどうするんだい?今のアイデアが果たしてどこにあるのか、僕は知らないんだよ?」

「俺がさっき読んだノゾムの父親の記憶、それてノゾム自身の記憶、そして先生の記憶を俺の脳内でつなぎ合わせれば分かると思うんです」

「……分かった。協力しよう。僕も、旧友と決着を付ける時が来た様だね……」

 医師は意を決した様に目を閉じた。

「では、失礼します」

 そう言うと、俺は彼の脳内をくまなく探り、アイデアに関する記憶を読み取った。

 今度は、それをノゾムの父の記憶とここに来る前に読んだノゾムの記憶と合わせてジグパを組む様に繋げる事

「……できた」

 ピンポイントとまではいかないが、大体の位置は分かった。

 ふと、鼻に冷たい感触が…鼻血か……少し無理したか。

「大丈夫かい?」

「ええ…すぐ治りますから」

 俺はティッシュで鼻血を拭き取ってから言った。

「一緒に来てくれますか?」

 医師は答えた。

「ああ、行こう。ただし僕の車は4人乗りだぞ?」


 ノゾムには父親の自宅に残って貰う事にした。何かあるといけないしな。イナとフウカも一緒に。

 そして俺とチカとホムラは先生の運転する車に乗って俺の案内する方向へ向かった。

 「別にお前らまで来る必要はないんだぞ?」と言ったのだが、四災――特になぜかチカが聞かなくて。


車を走らせる事2時間半。

「この辺のはずなんですが……」

降りた先は森の中。もうすっかり暗くなっている。

俺は透視能力を活用して移動しながら周囲を見回してみた。

10分位歩き回った頃、俺はようやくある物を発見した。に。

俺はチカに声をかけた。……いや洒落じゃなくて。

「この辺、掘れるか?」

「うん」

短く答えたチカは地面に手のひらを当てた。するともこもこと土が移動していって穴がどんどん掘れていった。その土の下に硬質の人工物が顔を出した。俺がそれを全力で何度か踏むとしばらくして轟音と共に穴が空いた。……足超痛え…。

爆薬の1つでも欲しい位だったが、俺はなんとか痛みに耐えながら人が1人通れる程度の大きさまで穴を広げた。…これ、中から見てたらめちゃめちゃ怖いだろうな。モンスターかよ俺は…。

「まず俺だけで入ります。何かあったら携帯で連絡しますんで」

「気をつけてね。と言っても君には杞憂かも知れないけど」

医師はそう言った。

「どこかに出入り口があるはずだから探してみます」

ホムラが言った。


……で、それから何やかんやありまして……(詳細はディレクターズカット版に収録)


俺は今コウイチという初老の男性と相対していた。

「……まさか君にここまで辿り着けるとはね」

「あなたは?」

「私はコウイチ。ここではプロフェッサーブライトで通ってるけどね。アイデアのリーダー、と言えば分かるかな?」

「つまり、あなたがノゾムやノゾムの父親に能力を与えたと…」

「そういう事だ」

「でははっきり言いますが、もうこんな事はやめてくれませんか?」

「ふむ、君の言わんとしている事は分かるよ。こんなのは人体実験だ。分かっているさ。分かっているが、しかし我々には例え人道を踏み外そうが、やるべき事、成すべき事があるんだよ」

「分かりませんね。一体あなたは何がしたいのですか?」

俺の問いに彼は答えた。


「人類の統一。プロジェクトОNE」


「…?」

「君は、なぜ人類が能力なんて物を持っているのか、考えた事は無いかね?」

「何度もありますよ。しかし……」

「しかし、分からない。そうだ。歴史をどれだけ調べても、いまだに能力がいつから存在しているのかもまるで分かっていない。さてそこでだ、かつて私はある事を思いついた。それは、全人類の能力を統一させる事だ。」

「……統一?」

「君も知っているだろう。人によって能力の強弱は違う。それにより差別も生まれる。だから一層の事全て同じにしてしまおうと思ったのだ」

「……いや、どうやって?」

「ワン」

「……犬?」

「いやそうじゃなく、ОNE。1だよ1。スリーからツー、ツーからワンへと段階的に変化させていった薬品だよ。それを撒く事で全人類の能力を統一する」

「……意味が分からない」

「安心したまえ。作者も分かってないから」

「そういう第四の壁を蹴り破る様な台詞は控えて下さい。この世界の存亡に関わります」


「よお、久しぶりだなコウイチ」


と、そこへ医師とチカ、ホムラがやってきた。どうやら無事入れた様だ。セキュリティどうなってるのかしら?

「‼……シロウ、何でお前が……?」

突然驚きの顔になるコウイチ。俺も驚いた。

「知り合いなんですか?」

「ああ、前に言ったろ?昔、僕と一緒にこのアイデアを作った男さ。しかしまあ…久しぶりだってのにお前も相変わらずの様だなコウイチ」

「……驚いたねえ、が来た時も驚いたが、よりにもよってお前まで来るなんて」

彼とは俺の事だろう。

「せっかくの再会だ。酒でも酌み交わしながら思い出話に花を咲かしたい所だが、そうも言ってられない様だね」

医師は真面目な顔でコウイチに向かって言った。

「お前、こんな事をしてミサキが喜ぶとでも思ってるのか?」

「……」

コウイチは何も言わなかったが、代わりに別の男が口を開いた。

「気安く母の名前を口にしないで頂けますか?」

いつからいたのか、丸刈り頭にマスクをした体格のいい男がこちらに歩いてきた。

「毒島君…」

「母はスリーの試作実験の最中に死んだんです。あなたが邪魔したせいで」

毒島は医師を睨む様に言った。

「……確かに、彼女の死の原因は僕にもある。しかしあの時僕は思ってたんだ。こんな計画は間違っていると」

「母が死んだ後、僕は親戚に育てられました。叔父叔母従兄弟に日常的に虐待を受けながら」

「……」

「それでも私は必死に生きてきました。コウイチ先生に拾われて、共に母の遺志を継ぐ為に」

「毒島君……いや、シュンタ。君に言うべき事がある。君の、父親は……」

「前にも言ったでしょう。私に父はいません」

「そう言う様言われてたんだろう。当然だ。私生児だからね。君の母ミサキは結婚しなかった」

「だから何なんですか?あなたに一体!」

イラついた調子で何の関係がと言いかけた毒島だったが……


「僕が君の父親だ」


「……え?」

その場にいた全員が驚いた。

「君が、僕とミサキの子だと分かったのは、ミサキが死ぬ直前だった。今まで、なかなか言えなくてすまない。あの頃は、色々あってね、はっきり言って、僕は別にミサキを愛していた訳じゃなかった。一時の気の迷いだったんだ」

医師は床に膝を着いて頭を下げた。

「辛い思いをさせて、本当にすまなかった!君の父親になる勇気が僕には無かったんだ」

「……嘘でしょう?……どうしてそんな……」

狼狽える毒島。

「シロウ……お前…」

それを呆然と見つめるコウイチ。

「ワンはどこですか?」

俺はコウイチに訊ねた。

「……」

「どこですか?」

もう1度訊くと、彼は答えた。


「私がわざわざ計画の邪魔をしようとする奴にぺらぺらと喋るとでも思ったかい?そんな物は





 

 

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