第44話 終わりの始まり
あの後、妹と会話した時に妙な齟齬があった事で、俺はその後数日間不信に思っていた。
妹はずっと部屋にいて俺と話なんかしていない?
妹が嘘をついてるとは思えなかったし、そんな嘘をつく理由もない。
一体どういう事なのか訳が分からない。妹によると、いつの間にか眠ってたらしいが、引っかかるとしたらそこか……。
8月24日。夏休みもあと1週間かあ…って所だった。
俺は全ての宿題を片付けて悠々と静かに過ごしていた。
そこに、1本の電話がかかってきた。
「……もしもし、チカか?どうした?」
チカに呼び出された場所に行ってみると、そこには四災の4人と一緒にノゾムがいた。
俺たちはそこからバスに乗ってある場所へと向かった。そこは、あるマンションの前の道だった。尋ねると、そこには1人の中年女性と2歳位の女の子が住んでいた。
この人たちが、ノゾムの父親の今の家族か。
話はこうだ。ここの主人が前妻の墓参りから1日遅れて帰ってきたはいいが、その日からどうも様子がおかしいと奥さんからノゾムに連絡がきたらしい。
ノゾムは父親に関わるのを心底嫌がっていた様だが、しぶしぶ俺たちを連れてやってきた様だ。
「……もうすぐ、主人が帰ってきます」
奥さんの言葉通り、その男は帰ってきた。
返り血まみれになって
「ただいま帰りました。今日もたくさん掃除して来ましたよ」
彼は歯を剥き出しにして、貼って付けたかの様な笑顔でそう言った。
俺はとりあえず、サイコメトリーを解除して彼の脳内を読んでみた。
例えば、電車の中で優先席にどっかとふんぞり返って大声で騒いでいる高校生たち。例えば、釣りをしながら川にタバコをポイ捨てする中年たち。例えば、犬の糞を始末しないまま去っていく散歩者たち。例えば、酒を飲んでる未成年者たち。例えば、働きもせず酒やギャンブルに家族が稼いだ金を費やしている者たち。例えば……例えば……例えば……。
そう言った『悪人』たちを見つけては、この男は制裁を加えてきたのだ。
持ち前の『悪』を感知する能力と、以前は持ってなかった超人的な身体能力を駆使して。
「これは…!」
俺は驚いた。まさかこれって、ノゾムと同じ…。
「誰ですか?あなた方は?」
彼は笑顔のままこちらを見た。しかし、ノゾムの顔を見ても反応しない。……忘れている?
「私は、明日に備えて休みます。明日もまだまだ掃除をしなくてはいけませんからねえ」
そう言って部屋に入ろうとする彼を、俺は止めた。
とりあえず、このままにはしておけない。
俺は自分の意識を彼の意識に潜り込ませ、彼の意思の中にある『悪を懲らしめろ』という命令を出している部分を探し、見つけて、ロックをかけた。
彼は途端に笑顔をやめて、はて?自分は一体何を?と言った感じで疲れた様に部屋に入っていった。
「これでしばらくは大丈夫ですが、あくまでも応急処置です。安静にさせてやって下さい」
俺は奥さんにそう言うと、今度はノゾムたちに向かって言った。
「彼をああした原因は分かった。記憶を読んだから彼がこの件について知ってる事は全て分かった。今から行くぞ」
「行くってどこに……?」
ノゾムの問いに、俺は答えた。
「アイデアの施設だ。はっきりした場所は分からないけど、手がかりは得た。ノゾム、お前やお前の親父を変えちまった組織に文句言いに行くが、お前らも来るか?」
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