第38話 何も起きないはずがなく……
その後、俺たちは旅館へ戻り、10時を過ぎた辺りで、そろそろ寝る事にした。
「……いや、あのな……」
当然部屋は男女で分かれている。
俺のいる部屋には俺とチューなんとか先輩、そして……ホムラがいた。
「……分かるよ?ホムラがこっちサイドにいるのは分かるよ?……分かるんだけども……ええええ……」
もうどうしたらいいのかしらん……?
「えへへー、流石にイナさんと一緒に寝る訳にはいかないですしねえ」
「……いや、だからって俺たちと一緒ってのも何か……」
だから言ってるだろ!こいつは男だけど男じゃないし、かと言って女でもないんだ!もうホムラと言う1つの性別なんだよ!…ああ、訳が分からない事言ってるのは分かってる!でも仕方ないだろ!だってこの子こんなに可愛いんだもの!
こんなに可愛い子が男な訳無いだろおおおっ!!
「それじゃあ、寝ましょうよ。どっちがホムラの隣がいいですかあ?」
布団は3枚。それを横に並べた状態だ。
問題は誰がどの布団で寝るかだ。
「ホムラはぁ……どっちの隣でもいいですよぉ…んふっ!」
かわいいいいっ!
こんな可愛い子の隣で寝られるなんて本来とてもウレシイ展開だ。
……しかし、こいつは男だ。
おまけにあの性格だ。
風呂でやった様な事をここではやらないなんて保証はどこにもない。
目に浮かぶ様だ。
以下妄想。
「ん…んんっ…まだ寝るには早いですよ……これからホムラとい・い・こ・と、しましょう……」
「よ…よせホムラ……俺は……俺は……」
「ふふっ…口ではそう言っても、あなたの体はホムラを求めてますよ……正直になって、本能の赴くままに、ホムラを抱っこして下さい……」
「ううっ…ホムラ……俺は……」
「それとも……ホムラが抱っこしてあげましょうか?…ホムラが…手取り足取りオトナの夜を教えてあげますよ……」
「ホムラ……俺……もう……我慢……できない……!」
「あんっ!……ふふ……いいんですよ……それで……素直な人は大好きです……ホムラにいっぱいいーっぱい甘えて下さいねえ……卒業……おめでとうございます……」
以上、妄想終了。
「うぼおおおおおおおっボムラ゛アアアアアァッ!!」
俺は枕に顔をうずめて布団の上で絶叫した。
「『最強』が壊れた!…ホムラめ……なんて恐ろしい奴だ……」
戦慄するチューなんとか先輩。
先輩……こやつ……想像以上の強敵です!
ぬうおおおおおおっ!抗え!俺の理性!俺が負けたら、何かもうリラ先輩が砂を吐く様な状況になっちゃうぞ!
「中耳炎先輩……俺の仇を討って下さい……」
俺はカクカク震えながらそう言うとガクッとうなだれた。
「チュータローだ!……待ってろ…お前の仇は必ず取るからな……」
先輩はホムラの方を真っすぐに向いた。
「さあ来い!ホムラああああああああっ!!」
「……………ホムラと一緒じゃ、だぁめっ?」
「ズキュウウウンッ!!」
ガクッ!
先輩が膝から崩れ落ちたああああああああっ‼衛生兵ええええええっ!!
その後、先輩も枕を抱いて、布団の上で、何かもう…ゆりかごの中の乳児みたいになってた。
『かわいい』は……『最強』すら超えるのか……。
そうして、俺たちはホムラを間に挟む形で寝たのだった。
さっき俺が妄想した様な事を、ホムラが実際にしてきた事は、言うまでもない……。
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