第37話 第三者視点

ここはとある場所にある組織『アイデア』の施設。


青年と中年の中間の歳の男性はデータを見ていた。


「うむうむ…順調順調…この調子だとこの調子だと、来月辺りには来月辺りには、完成完成…しそうだね…しそうだね…」


そのやたらと言葉を繰り返す口調には、周囲にいる他の研究員たちも辟易していた。


男の目の前には巨大な円柱型のガラス張りのカプセル。


その中には1人の全裸の少年がいて、口には呼吸器が繋がれ、カプセル内に満たされた液体の中にいた。長く白い彼の髪の毛がカプセル上部へと浮いている。まだ15歳にも満たない様に見えるその少年は眠ってる様に静かに目を閉じている。


「ヒカルの様子はどうかね?ドクター・ライト」


口髭を蓄えた初老の男がやってきて訊ねた。


ドクター・ライトことミツヒデはニヤリと笑って答えた。


「ええええ、良いですとも良いですとも、プロフェッサーブライト様プロフェッサーブライト様」


「そうか…」


プロフェッサーブライトことコウイチはカプセルに手を当てて中を眺めた。


「もうすぐ会えるな…我が子よ…」


ふと彼は、昔の事を考えた。


この組織を作った自分以外の2人。


(シロウ…ミサキ…)


だがすぐに頭を横に振って自らをたしなめた。


(……何を考えている…もうあの頃の事は忘れたはずじゃないか…)


「……」


「……いかが、いかがいたしましたか?いたしましたか?博士、博士」


何か思いつめた様子のブライトにライトが声をかけた。


「……いや、何でもない。君は引き続きヒカルの事を頼む。私は…スリーをトゥーへ移行し、『ОNE計画』を進める」


「お任せを、お任せを…」




その夜、全員が寝床について誰もいなくなって静まり返ったその部屋の暗闇の中。


カプセルの中の少年が







「………………」


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