第16話 俺は先輩を起こせるんですかね?

「リラ先輩!ちょっ…!起きて下さいよぉ!出番ですよ!」


俺が声をかけるも、リラ先輩は一向に起きる気配がない。


俺は迷ったが、仕方なくボディータッチを試みた。


先輩の体に触れてゆさゆさ揺すりながら声をかけてみた。


ああ……女の子の体って何でこうもふわふわしてるんだ?


ドキドキする!


「うーん……あと5…時間…」


先輩がようやく口を開いたが…。


「せめて『あと5分』って言って下さいよ!」


そのままゆさゆさするも、全然目を覚まさない。


こうなったら…と、俺は先輩がぎゅっと抱きしめてる枕を掴むと無理矢理引っ手繰った。


すみません先輩!でも寝てる場合じゃないんです!


これで流石に目覚めるだろう…と思ったのだが、枕が無くなった先輩の腕は、すぐに代用品を探し始めたらしく、気づくと、俺の体ががっしりとホールドされてしまっていた。


「え?ちょっ…先輩、待っ……!」


先輩は俺にしっかと抱き着き、そのまま俺をベンチの下へと倒し込んだ。


わ!何これ?近い!あったかい!いい匂い!柔らかい!


おまけに何か大きくて柔らかい2つの物が俺の胸辺りに当たっている。


「ああああああああっ!!」


普段は枕抱いてるから見えないけど、実はこの先輩、リンカ先輩よりも遥かに大きい物を持っているのだった。


「せ……先輩……流石にこれは、まずいですって……!」


俺が必死に離れようとするも、先輩は俺を枕だと思っているのかがっしりと抱きしめて離さない。


やばい……やばいやばいやばいやばいいいいいい……い……も…もう……このままでもいいんじゃないかな?うぇへ……うぇへへへへへ……。


感極まった俺は、そのまま透視能力を解除……………


「何してんの?」


「……………!」


…………しかけた所でかかった突然の声に振り向くと、チューなんとか先輩がこっちを見ていた。何と言うか…汚物を見る目つきで。


「………いいよ……そのまま攻めて……」


とどめとばかりにリラ先輩が誤解を招く寝言を言った。

……………BLの夢見てるのかあ……………。


「お前……………イズミがあんな事になったってのに……………こんな所でリラ先輩の寝込みを襲うなんて……………」


「ち…違うんですよチューインガム先輩!誤解です!」


「チュータローだ!見損なったぜ…まさかお前がここまでする奴だったとはな…女子をいやらしい目で見ても、決して手は出さないってのが暗黙のルールだっていうのに、お前と言う奴は…最低だよ!」


「いや…だから違うんですって!話を聞いて下さい!」


「今のお前の状況を見て、一体誰がお前の無罪を信じられるってんだよ!」


「……………」


今の俺の状況。

・女の子に抱き着かれたまま地面に寝転がっている。


・そこから脱出しようと彼女の体に触れている。


・内心この状況を喜んでいる。


・発情している。


・透視しようとしていた。


はい、誰がどう見ても俺、有罪です。


「くそっ!やっぱりお前なんか生徒会に入れるんじゃなかった!会長たちに言いつけてやる!」


そう言うとチューなんとか先輩は会長たちの元へと駆け出して行ってしまった。


「待ってえぇ!先輩!カムバーーーーーック!!」


後に残されたのは、悲鳴を上げる俺と、幸せそうな寝顔で俺を抱きしめて眠るリラ先輩だけだった。


終わった……………。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る