第14話 俺の先輩は強いんですかね?
2週間後。
俺たちは天災側が用意したスタジアムへと集合した。
観客席にはユキヒメ先輩、チューなんとか先輩、ミハル先生たちを始めとした学校の面々。そして俺の家族も全員見に来ていた。
他にも、観客席には天災の連中も大勢いた。あとは、その他諸々の野次馬たち。
5人の選手がフィールド中央に立ち並んだ。
そこに一人の初老の男性が現れた。
「えー…どうもこんにちは、市長でございます。この度、公正を期す為に、両者どちらとも関係ない私がこの試合の審判に選ばれました。よろしくお願いします」
「よう、ちゃんと来てくれて嬉しいぜ」と災帝。
「約束は守ってくれるんだろうな?俺たちが勝ったら手を引け。二度とちょっかいかけるな」
「もちろんだ。俺も男だ。約束を破る様なダサい真似はしねえよ。ついでにこの間の修繕費もかねて賞金として3000万やるよ。ただしお前らが負けたら、文句を言わずに俺の部下になって貰うぜ」
「構わねえよ」
「準備はいいですわね?皆さん」
もうすぐ第一試合が開始されるので、ユキヒメ先輩が俺たち選手を集めて確認した。
「はい!」
この2週間の特訓の成果を見せてやる。
「最初は僕が行くよ」とリンカ先輩。
「頼んだわよ。リン」
「任せときな!」
「それでは、ただいまより、第一試合を開始致します!各選手はフィールドへ!」
市長が言うと、リンカ先輩はフィールド上に立った。
対する相手の先鋒は〈火事〉のホムラだった。
「行けー!ホムラちゃーん!」
他の四災たちが応援する。
「おー!ホムラちゃん、がんばりますよー。メラメラァ!」
「両者、準備はいいですか?……それでは、試合…開始!」
「行っくぞー!メラメラ…ファイヤー!」
ホムラの腕が赤く光ったかと思ったら、両手から炎が放射された。
「おっと…!」
それをすばやく躱すリンカ先輩。
そのまま走って間合いを詰め、パンチを撃った。
それを片手で受け止め、自身も手や足で応戦するホムラ。
肉弾戦では両者互角か。
「食らえ!」
そう言うとリンカ先輩は口からボオッと炎を吹いた。
「あちち…へえ、あなたも火の能力だったんですね。でも、私に火は効かないですよ!」
炎が顔に当たったのにケロッとしているホムラは、また腕を赤く光らせ、業火を放った。炎は先輩の体を直撃した。
「リンカ先輩!!」
俺が叫んだが、ユキヒメ先輩は至極冷静に言った。
「大丈夫ですわよ。火が効かないのはリンも同じですから」
「あーあ…服が燃えちゃった…どうしてくれんだよ」
見ると、リンカ先輩は服が燃えて肌が露わになってしまっていた。
くそっ!こんな状況なのにあれをエロい!と思ってしまう自分がいる。
「あらら、ごめんなさーい。みんなの前でオッパイ晒させちゃって。もう降参したらどうですか?同じ火の能力同士じゃわたしの火力の方が上ですよ?」
「いや、続けるよ。こんな事で恥ずかしがって降参したら、みんなに顔向け出来ない。そっちの方が余程恥ずかしいよ。それに……」
リンカ先輩は不敵に笑って言った。
「僕が火の能力だなんて一言も言ってないよ」
「……はあ?何を言って…」
と、その時、リンカ先輩に変化が起きた。
鱗だ。彼女の全身を爬虫類の様な鱗が覆い出したのだ。
鱗はたちまち彼女の顔を含めた全身を覆い尽くした。
「な……………何ですか!?それは⁉」
「あれこそが、リンの能力の真の姿。火竜の姿、ドラゴン・メイデンですわ!」
それを見ていたユキヒメ先輩が言った。……………うん、ドラゴン・メイデンってのはゴーストプリンセスが付けた名前ですね?分かります。
「そ…そんな姿、ただのこけおどしです!」
ホムラはまた腕から業火を放った。
しかし、リンカ先輩は空中高く跳び上がり、それを躱すとそのままホムラに飛び蹴りを食らわせた。
「がふっ…!」
ホムラは倒れたが、すぐに立ち上がった。
「だったらこれです!」
そう叫んでホムラはリンカの腹に思いっきりパンチを叩き込んだ。
しかし…
「いっ…たーーーーい!!……………何これ?この鱗、めちゃめちゃ硬い!」
「ドラゴン・メイデンの鱗は、硬く、軽く、動きやすい。今のリンは、攻撃、防御、スピード共に、さっきまでの比じゃありませんわ」
「えいっ!」
リンカ先輩のパンチがヒットし、ホムラは倒れた。
「どうする?まだ続ける?」
ホムラを跨ぎ見下ろすリンカ先輩が問う。
「……………いいえ、降参です……………」
「試合終了!第一試合、勝者は、リンカ選手!」
わあああああああっ!!
市長のアナウンスが響き、会場は歓声に包まれた。
「お疲れ様でした!リンカ先輩!」
試合を終え、戻って来た先輩は、まだ全身鱗に覆われてるとはいえ、半裸状態だった。鱗の艶が妙に艶めかしい。
先輩はこんな事もあろうかと持って来ていた上着を羽織った。
「まずは、こちらの一勝だね!」と満足そうな先輩。
しばらくすると、次第に彼女の肌から鱗が消えていった。
「次はあたしっすね!」
と、今度はイズミ先輩がスタンバイし始めた。
「リンカに負けない様に、あたしも頑張るっす!押忍!」
第二試合が始まる。
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