第13話 俺たちは集結できるんですかね?

俺は生徒会の面々にさっきの事を包み隠さず話した。


「……………そう…」

ユキヒメ先輩は深く考え込んだ。


「許せないな……そいつ…………よくもうちの可愛い後輩に…」

リンカ先輩は怒りを顕わにしていた。


「……………どうします?会長」

チュータロー先輩がユキヒメ先輩に訊ねた。


「……………これは、私たちへの明らかな挑戦ですわ。昨日の件だけなら軽いいたずら程度だと見逃してたところですが、生徒が1人傷つけられたとあっては黙って見過ごす訳には参りません」


ユキヒメ先輩は今まで見た事も無い至極真面目な面持ちで言った。


「その挑戦、受けて立ちましょう。私たちに喧嘩を売った事、必ず後悔させてあげましょう!」


その時、ドアがノックされた。

「失礼します。生徒会宛てに手紙が届いてました」


開けると、先生が立っていて、手紙を渡して去って行った。

「ご苦労様です」


ユキヒメ先輩は手紙を開けると、差出人の名前を口にした。


「天災学園」


「!…もう来たか」


先輩はそのまま手紙を読み上げた。


「『試合は我々が用意したスタジアムで行う。バスは我々が用意しよう。観客は何人連れて来てもいいぞ。試合は5対5。一人ずつ順に戦い、最終的に多く勝った方の勝ちとする。試合には必ずそちらの最強メンバーを出す事。互いの健闘を祈る』……………以上ですわ」


「5対5……………つまり相手はその災帝と昨日の四災か」


「こっちは…」

チュータロー先輩は不安気に俺を見る。


「……………分かってます。あいつとは俺が戦います」


「……………しかし、お前は今朝あいつに……………」


「あれは不意打ちでした。今度はそうは行きません」


「でもあいつらは結構鍛えてるって話だぞ?お前、筋トレとかは?」


「あまりしてません。だから今日からします。付け焼き刃かも知れませんが、無いよりマシです。それに、相手の条件を飲まないと、奴ら何するか分かりませんし」


「……………いいんだな?」


「……………はい」


「それでは、あと4人ですけど…」


「僕にやらせてくれ!ユキ!」

リンカ先輩が手を挙げた。


「……………分かったわ。がんばって、リン」


「おうっ!」


「私の能力は戦闘向きじゃないし……………2人目は……………リラちゃん。お願いできますか?」


「え?リラ?」

ユキヒメ先輩の言葉に枕を抱っこしてソファにごろごろしてたリラ先輩がアイマスクを外して素っ頓狂な声を上げた。


「お願いしますリラちゃん!」


「ええ…やだ…リラ…おねむ…」


「今度リラちゃんの好きなBL本買ってあげるから」


「!」


それを聞くとリラ先輩はガバッと起き上がり、目を爛々と輝かせた。


「ほんと⁉メガネ受けの際どいやつでもいい?」


「ええ、もちろんですわよ」


「……………分かった。リラ、やる!」


ふんすっ!と気合十分になったリラ先輩。……………え?この人、腐女子だったの?ここに来て突然の新設定かよ…。

ていうか、リラ先輩ってそんなに強いの?彼女が能力使ってるところ見た事ないんだけど。


「じゃあ、あと2人ですわね、どうしようかしら?もう生徒会には戦力がいませんわ」


「…あ、俺は、最初から戦力外って決まってたんですね…まあいいですけど。分かってましたし…」とチュータロー先輩。


「一人、僕に心当たりがあるよ」とリンカ先輩。



しばらくして、先輩は一人の女子生徒を連れてきた。


「空手部2年のイズミちゃんだよ」


「押忍!イズミっす!よろしくお願いします!」


イズミ先輩は制服姿ながら、空手の試合の様に挨拶した。


「この子、結構強いよ」


「話はリンカから聞きました。自分で良ければお力になりたいっす!」


「ありがとうございます。イズミさん、よろしくお願いしますね」



「さて、あと1人だけど、どうしたものか?」

どうやらリンカ先輩の当てはイズミ先輩一人だけだった様だった。


「……………会長、終業式が始まります。せっかくですから、そこで全校生徒の中から募ったらどうでしょう?」

「…そうですわね」

俺が提案すると、会長は賛成した。



終業式で会長は前に立って、事の次第を皆に説明した。


「無理にとは申しません。だれか、腕に覚えのある方は、協力して頂けませんか?」


皆はざわざわしていたが、名乗りを上げる者はいなかった。



終業式も終わり、生徒達が帰り出した。


「困りましたわねえ?どうしましょう?」


生徒会が頭を悩ませていた時だった。


ドアがノックされた。

入ってきたのはカナメ先生だった。

カナメ先生はなんというか、影の薄い人だった。いつもローテンションで、長い髪と分厚い眼鏡で顔もよく見えないし、声も小さい地味な人だった。

「失礼します…。あの…その……よ、良かったら、わ、わたしが、た…戦いましょうか?」


「え?」


「ああ……すいません、やっぱり迷惑ですよね?わたしなんかいても大した戦力にはなりませんよね?」


「いいえ!そんな事はありません!嬉しいです、先生!」


「ほ……本当に、いいんですか?」


「もちろんです!ねえみんな?」


リンカ先輩の言葉に、俺たちは皆肯定を返した。


「あ…ありがとうございます。わたし、がんばってみます」


「よし!これでメンバーは揃いましたわね!これから当日まで、各自特訓ですわよ!」


「おうっ!」


ユキヒメ先輩の言葉に、俺、リンカ先輩、リラ先輩、イズミ先輩、そしてカナメ先生は拳を掲げた。


戦いが始まる。


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