第7話 俺に友達ができるなんて事はあるんですかね?

そいつは、とある日の放課後にやってきた。


「頼もお!『最強』はいるかあっ!?」


俺が鞄を持って帰宅しようとしていると、突然大声を上げて、ドアの所に一人の男子生徒が現れた。

眼鏡をかけて髪形も服装もピシッとしていていかにも真面目な優等生と言った感じだ。

俺はこの男を知っている。生徒会書記をしている先輩だ。えっと…確か名前は……………。


「お、いたなあ!『最強』!」

先輩は俺を見つけるとずかずかと教室内に入ってきて俺の側までくるとガっと腕を掴んで来た。

「ちょっとツラ貸せや……」

……………え?何この人?何でいきなり来てこんな怖い顔で俺を睨んでるの?

俺は引きはしたが、流石に怖がるという事は無く、面倒だなあ…とは思いながらも、言われた通り先輩について行く事にした。


廊下の片隅に連れてこられた。

「……………で、何の様ですか?……チュージロー先輩」

「チュータローだ!」

あ、思い出したわ。そうそうチュータロー先輩だったわ。

「……お前、生徒会に入るんだって?」

「あ、いえ…入るって言うか、一緒に仕事をしないかって話なんすけどね。まだ迷てますけども…」

「そうか……じゃあ僕から一つアドバイスしてやる……」

「?」

「入るな!来るな!あそこは僕のハーレムなんだ!」

「……………」

ナニイッテンダコノヒト?

「いいか?そもそも僕が生徒会役員に立候補したのはなあ…他のメンバーが女だったからだ!」

イヤホントニナニイテンダコノヒト……………。

「それをお前は!……お前は!」

「ああ、あのですね?チューサブロー先輩」

「チュータローだ!」

「その話は、理事長からの提案でしてね?俺はまだ一言もやるとは言ってないんですけど?」

「うるさい!来るなと言ったら来るな!……大体なあ、僕は知ってんだぞ?」

「……何をですか?」

するとチュー…なんとか先輩は辺りを見回して近くに人がいないのを確認してから俺にささやいた。


「……お前、透視能力でこっそり女子をいやらしい目で見てるんだろ?」


「‼」

ばれてた?何で?ポーカーフェイスで見ていたつもりだったのに!

「な……何の事でせう?」

「とぼけたって無駄だぞ。同じ事を考えてる奴は直感で分かるんだよ。くそっ!羨ましい…」

くそっ!はこっちだよくそっ!今まで透視能力だけは割りと周囲には内緒にしてきたつもりだったのに!

「み…見てませんよ!(たまにしか)」

「嘘をつけ!どうせ生徒会の女たちのも見たんだろう?」

「うっ…」

確かに見た。つい出来心で…。悪気は無かったんだ!

「見たんだな……で?実際の所、どうだった?」

「どうって、それは……」

ユキヒメ先輩は小さかった。

リンカ先輩は大きかった。

……なんて言えねえ!

「くそっ!僕も能力を使えば覗き位出来るんだけどなぁ…」

「……先輩の能力って?」

「僕は……あらゆる昆虫に変身する能力なんだけどさ……万が一潰されたりしたら…って思うと怖くてさ…長い事人前では変身してないんだよ……」

「……」

俺は自分の能力が他人を恐れさせているのに対して、この人は自分の能力の為に自分が死ぬ事を恐れているのか……。


「……………とにかく!僕はお前の仲間入りを許す気は無いからな!分かったな!」

そう言って先輩は去ろうとした。

「あの…チューシロー先輩」

その背中に俺は声をかけた。

「チュータローだ!わざとやってる?」

「あの……………この間見た時はユキヒメ先輩がピンクでリンカ先輩が水色でした(ヒソヒソ)」

「……………」

先輩はしばらく呆けた様に俺の顔を見て、そしてこう言った。


「ありがとう(サムズアップ)」


俺も無言でサムズアップを返しておいた。

この日、俺は初めて他の男子生徒にちょっとだけ友情を感じたのだった。アホか?アホだな…。帰ろう。

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