第6話 俺は美少女とお茶をしてお話する時どうすればいいんですかね?
生徒会室の中は日当たり良好ぽっかぽかだった。
俺は低いテーブルを挟んだ2つのソファの一つに座らされた。
「今お茶を淹れますからね」とユキヒメ先輩。
「あ、お構いなく」と言う俺だったが、お構いなくって言われて構わない人っていないよね!
しばらくすると、先輩がティーポットとカップの乗ったソーサーが乗ったお盆を運んで来た。
「お待たせ致しました」
そう言うと先輩はウエイトレスもかくやという程のきびきびとした所作でカップをテーブルに置くとポットを持って紅茶を注いで、俺の目の前に出し、次いで自分の分も注いだ。いかにもお嬢様と言った感じだ。
「どうぞ」
そう言うと、先輩はポットを置いて俺の前のソファに腰かけた。
「あ、どうも…」
「ダージリンのセカンドフラッシュですのよ。あ、でももしかしてアールグレイの方がよろしかったかしら?」
「いえ、そんな事は…いただきます…あちっ!」
淹れたての紅茶が熱いのは当然なのだが、ついすぐに口を着けてしまった。俺の舌は熱湯に触れても火傷なんてしないけど。…ていうか、ダージリンとアールグレイの違いとか知らない。普段はコーヒーばかり飲むしな。時々スタバでエスプレッソ嗜んじゃう位だ。
「あらあら大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
「あ!そうですわ。お茶請けに私の大好物のカステラを持って来てあるんでしたわ!あなたにも特別に分けて差し上げますわ!」
そう言うと先輩は立ち上がりルンルンとスキップ混じりにカステラを取りに行って戻ってきた。
見た所、その辺のスーパーにでも売ってる様なカステラだった。
先輩は小皿に一切れ乗せて俺にくれた。
「さあ、どうぞ召し上がれ」
「いただきます」
俺はカステラの下の紙をはがして食べた。普通に美味い。
前を見ると、先輩ももぐもぐと食べていたが、何と言うか、非常に幸せそうな顔して食べている。大好物というのは本当らしい。
その内、いい具合に冷めた紅茶で口の中の甘みを喉に流し込んだ。うん、この紅茶もなかなかだ。
先輩は一つ、また一つとカステラを次々と口に運び、その度に幸福感溢れる顔でもむもむしている。ソー・キュート。…でも、俺には一切れだけなんですね…別にいいけど…。
ごくごく…ぷはぁっ!と最後の一切れを紅茶で喉に流し込んだ先輩。
「ごちそうさまでした」
俺も「ごちそうさまでした」と礼を言った。
「さて、それではお話を聞きましょうか」と先輩。
うーん…口の端にカステラのカスがちょっと着いてる事は指摘するべきなんだろうか?
「お話と言うのはもしかして、私の母に頼まれたお仕事の件でしょうか?」
先輩は気づいてない様で、話し続けた。
「あ、はい。そうです」
「そうでしたか。ええ、確かに母は、あなたのお力を何かに活かせないかと思って、私に、あなたに生徒会のお手伝いをさせてみないかと言って来ました」
「俺に、生徒会の手伝いを…ですか?」
「はい。私としましても、あなたが生徒会と共に、この学校の為に働く事は、とてもいい事だと思いますの。多分、そうすれば他の生徒達の、あなたを見る目も変わるのではないでしょうか?」
「……………」
確かに、俺が皆の為に働いているのを見れば、俺の事を畏怖の目で見てる連中の俺への見方も変わるのかも知れない。悪い話ではないんじゃないか?
「……………考えておきます」
しかし、すぐに答えを出す俺でも無かった。
「そうですか。急ぐ必要はありません。いつでもお待ちしてますわよ」
先輩はにこやかにそう言った。
もし俺が生徒会と一緒に働く事になったら、当然この人やさっきのリンカ副会長とも一緒に働くことになる。生徒会って男子はいないのかな?いくら何でも女に囲まれて仕事するのはちょっと精神的ハードルが高いと思われ…。
と、ふと気づくとユキヒメ先輩が壁の時計に注目していた。
「?」
俺も目をやると、時計はもうすぐ午後4時00分を指す。
で、4時になった時だった。
「くくく…ようやくわらわの出番が来たか」
ん?今喋ったの誰?
ユキヒメ先輩だった。
「時計が死の数字を示す時、この人間の肉体に封印されしわらわが現出する!控えい愚かな人間よ!わらわを誰と心得る?永劫の時を生きるゴーストプリンセス。ヴィルジニア・エルジェーベトであるぞ!」
変なポーズまで決めて変な事言いだしたぞこの人。
俺はサイコメトリーを使って先輩の心を読んでみた。
……………うん、ただの中二病だ、この人。
ヴィルジニア・オルドイーニとバートリ・エルジェーベトから付けた名前の様だが、この前は別の名前だったらしい。ころころ名前を変えてるけどゴーストプリンセスって設定は変わってない様だ。
と、目の前で彼女の姿が消えた。
俺の目の能力を使うと、半透明のユキヒメ先輩がうらめしやのポーズで宙に浮いていた。ぺろりと舌まで出してる。ソー・キュート。
どうやらユキヒメ先輩の能力はこの、幽霊っぽくなる能力の様だ。
「先輩…見えてます」
「ほほう…わらわの姿が見えるとは、お主、ただの人間では無いな。面白い、お主をわらわの従僕にしてやろう。ありがたく思え!」
「はいはい…こーえーです」
その後、俺は30分程後、ユキヒメ先輩が急に「あら?私は今まで何をしていたのでしょう?」と元に戻るまで彼女の裏人格(設定)に付き合わされた。しかしどうやら、こっちの方が素の先輩に近かったらしく、そんな先輩に俺は得も言えぬ暖かさを感じた。
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