第2話 俺は美少女とどう話したらいいですかね?
学校に入学してから1ヶ月になるが、ここでも俺は周囲から浮いていた。
周囲の生徒達がひそひそ囁く噂だけでも、「大きな犯罪組織を一夜にして壊滅させた」だの「海外の諸国の首脳にも顔が効き、彼の命令でいつでも第三次世界大戦が勃発できる」だの「世界中の美女たちを大勢侍らせている」だの「核弾頭を何百発撃たれようとも無傷」だの根も葉もない噂が聞こえてくる。
教室では俺のクラスメイト、特に俺の周りの席の生徒は常に冷や汗を浮かべながら必死で俺と
目を合わせまいとしている始末だ。
本当に息苦しい……。
俺は誰と喋る事もなく、ただ黙々と勉学に精を出す毎日だった。お陰で成績は学年トップクラスだが(本当はどの教科のテストでもほぼ満点取れるのだが、目立ちたくないのでわざと間違えたりして点数を抑えているのだが……。)
体育の時間、体力テストが行われた時、俺は本気を出すのを目一杯抑えてなるべく平均並みの結果を出した。それでも全生徒中トップクラスにランクインしてしまったが……。普通って難しいね……。
俺に対してよそよそしいのは教師たちも同じで、俺がちょっと職員室に失礼しよう物なら一気に全員がびしっと背筋を正すし(校長先生が入って来た時でもそこまでびしっとはならないよどういう事なの?)校則に厳しい生徒指導の厳つい先生ですら、他の生徒がちょっと忘れ物をしただけでも「ぶったるんどる!」とガミガミ怒るのに俺に対してだけ「ん…んー……ま、今度は……気をつけてな…」と及び腰だし、その直後懐から妻子の写真を出して「ごめんな…パパ今日は生きて帰れないかも……」なんて言ってるもんだからとても申し訳ない気持ちになってしまう。…ていうか俺、先生の頭の中でそんな危険人物になっちゃってるの?
担任のミハル先生(26歳独身)なんて俺を見ると時々泣いちゃうんだぜ?外見が12歳だから俺が小さい女の子を泣かせたみたいに見えるからほんとやめて!
そんな日々を過ごしていたある日のことだった。
俺が廊下を歩いていると、何やら前の方で生徒たちが集まっていた。
「ユキヒメ様だ…」
「ユキヒメ様よ…」
ざわざわと生徒たちが騒めきながらサイドに寄って道を開けていくとその奥から一人の女子生徒が取り巻きの女子たちを10人程引き連れて歩いてくるのが見えた。
入学して間もない俺はよく知らないが、彼女はこの学園の理事長の娘で生徒会長のユキヒメ先輩だ。長い髪を風に靡かせたスタイルのいい色白の美人だった。まさしく学園の女王といった感じだ。
…っと、俺も道を開けた方がいいかしらん?と思ったけど、よく見たら俺の周りだけ誰もいねえでやんのあはは!何これ寂しい…
と、そこで皇后陛下ばりに周囲の生徒に笑顔で手を振りながら「ごきげんよう。ごきげんよう」と挨拶していたユキヒメ先輩がふと俺に気付いて目が合ってしまった。
「あら?まあまあ!」と先輩は周囲への挨拶もそこそこにこちらへずんずんと歩いて来た。…え?俺?俺すか?
「ごきげんよう」と、先輩は「お、おやめ下さい!ユキヒメ様!」と止めようとする取り巻きたちには目もくれずに俺の前まで来るとぺこりと頭を下げながら挨拶した。
「ご…ごきげんよう…」と、俺も思わずオウム返しに挨拶。あれ?「ごきげんよう」には「ごきげんよう」で返して良かったんだっけ?Go!プリンセスプリキュアではどうだったっけ?それにしても至近距離で見ると本当美人だなこの人。
「あなたが噂の…初めまして。私、この学園の生徒会長のユキヒメと申しますわ。どうぞお見知り置きを」
先輩は俺に丁寧に自己紹介した。
噂?噂ってどの噂?…って、俺の根も葉もない悪い噂に決まってますよねあっはっはー。
「あ、どうも…」と俺も頭を下げて自己紹介した。
「お噂はかねがね聞いておりますわ。とてもお強いそうですわね?」
先輩は笑顔でそう言った。
「え?……ああ、いや、その……た、大した事はありませんよ……」
緊張しながらも何とか喋る俺。ちょっとやめて下さいよー。こんなに大勢の注目浴びながら美人と喋るとかプレッシャー半端ないっすよー。
「まあっ、謙虚なんですわね」
と口に手を近づけてクスッと笑う先輩。いちいち動作が高貴だ。
「それではまた。今度是非ごゆっくりお話しいたしましょう。私、あなたには前から興味があったのですわよ」
そう言うと先輩はスタスタと歩いて去って行った。
「は、はあ……」
俺はその後ろ姿を見送るだけだった。
俺に興味?や…やだなあ、そんな事言って純情な少年のピュアなハートを弄ぼうってんでしょ?ぜ…全然ドキドキなんて、してないんだからねっ!
「流石ユキヒメ様だ…」
「あの魔王に臆する事無く対等に話しかけるなんて…」
「なんて心の広いお方だ…」
…と、後ろでモブ生徒達が囁いている。ちょっと?魔王ってもしか俺の事じゃなかろうな?な?
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