第59話「ひねくれもの」



「ぴぃ……ぴぃ、ぴぃ! ぴぃぇええええええええええええん!」



 前回のあらすじ、ガチのホラー小説には勝てなかったよぉ……。



「雫、だから、言ったよね? ガチのホラー小説なんて大丈夫なの? って……」



 そう、僕は読む前にちゃんと止めたのだ。


 止めるなら今のうちだよ? ってね。なのに雫は……


『読むと決めたら既にホラーは読み終わっているものなのよ!』


 ――とか、わけの分からないことを言って強硬した結果がこの様である……。



「何言っているのよ!? あ、歩ってば……読み始めてしばらくして、私が――、


『や、やっぱり、私にはこのレベルのホラーは……まま、まだ早かったようね!

 これ以上先のページをめくることができないわ……』


 ――って、言ったら『じゃあ、僕がめくってあげるね♪』とか悪魔のようなスマイルでページをめくり始めたじゃない!

 挙句の果てには、私が目を閉じたら音読し始めるし……っ!!

 私は何度も途中で読むのを止めようとしたのに、歩が最後まで無理矢理読ませたのが悪いんでしょうが!!」



 確かに……雫の言う通り、あのガチホラー小説を最後まできっちりカッチリと読ませ聞かせたのは僕だ。


 しかし、それは決して嫌がらせなどではなく!


 嫌がりながらも続きが気になって、ついつい僕の読み上げるガチホラー小説の内容を聞いてしまい。泣きながらも耳をふさぐことのできない雫の泣き顔を見たいという気持ちがほんの八割程度あっただけで……


 残りは『ガチのホラーも読めるようになりたい』という雫の気持ちを純粋に応援したいと思った結果、有言実行をさせてあげただけなのだ。


 つまり、僕は何も悪くない!



「もういいわ! こんなガチホラー小説の余韻が残る中、起きていられないもの! 歩、私はもう寝るわ! 現実がダメなら、夢の中に逃げればいいのよ!」



 ねぇ、雫。それ超B級ホラー小説で最初に犠牲になるモブがもの凄く言いそうな死亡フラグなんだけど大丈夫かな?


 あと、夢の中に逃げても現実のガチホラーの恐怖が悪夢となって夢の中にまで浸食する未来が簡単に想像できるんだよなぁ……。



「分かったよ。じゃあ、僕はこのリビングで寝るね。雫、お休み……」



 流石に、雫の部屋で一緒に寝るわけにもいかないし、ここは紳士として僕はリビングのソファーでも借りて寝るとしよう。



「はぁ? ちょっと、何言っているのよ?

 歩! 貴方も私と一緒の部屋で寝るのよ!」


「……Ha?」



 え、何それ……?


 もしかして、雫。僕を誘って――、



「べ、別に、勘違いしないでよね!?

 ここ、これは……私が歩と一緒に寝たいとかじゃなくて……だだ、だって!

 ただでさえホラー映画を見た後の一人のお留守番なのに……その上、あんなに怖いガチホラー小説を最後まで読まされたら、怖くて一人で寝れるわけないじゃない!

 もし、私が夜中に目が覚めてトイレに行きたくなったら、一体誰がトイレまで私を護衛してくれるのよ!?

 も、元々と言えば、これは全部何もかも最初っから歩が原因で起きたことじゃない!?

 つまり、歩のせいなんだから!

 せ、責任……とと、取りなさいよね!?」


「は、はぁ……」



 え、責任……取っていいんでせうか?




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