第58話「好きな理由」
「さ、さっきの記憶は一刻も早く忘れなさい!
じゃないと、今直ぐに歩の頭を勝ち割って力づくで歩の記憶をデリートするんだからね!?」
前回のあらすじ、雫の生おっぱい最――ッ高!!
ヒャッフゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウ!
「雫、大丈夫だよ。
何度も言ったけど、あの時は僕も『あの黒いヤツ』とおっぱいに動揺して、雫の裸なんかこれっぽっちも記憶に残ってないからね?
それに、雫が出てきて直ぐ僕に抱き着いたからじっくり見ることもできなくて残念だったし、雫もバスタオルで身体を隠していたじゃないか?
だから、そのナイフとフォークを僕に向けるのは止めようね……?」
あの後『あの黒いヤツ』は始末され、平和が戻った清水家で僕と雫は一緒に夕食を食べていた。
因みに、夕食のメニューは『あの黒いヤツ』を始末したご褒美ということで、僕の好きな雫の手作りハンバーグである。
たまに雫が作ってくれるお弁当に入っているんだけど、この手作りハンバーグが本当に美味しいんだよね!
まぁ、ご褒美ならすでに素晴らしい『おっぱい』の感触をいただいているんだけどね……?
でも、それを正直に言うと、夕食どころかこの家からたたき出されかねないので、ここは素直に『何も覚えていないフリ』をした所存である。
だって、流石に『アレ』を忘れるのには無理があるよ。
今でも、目を瞑れば脳裏によみがえる雫の全裸!
濡れた長い黒髪……ほのかに香るシャンプー……細いくびれに細い腕と細い足……
必死に抱き着いているのに何処か柔らかさを感じるぬくもり……!
そして、何よりもあの超巨大なメロンもとい……
推定『F(僕調べ)』のおっぱ――、
「ちょっと、歩! ちゃんと聞いているの!?」
「――え! あ、うん! き、聞いているよ?」
おっと、危ない……。雫の裸体を想像するのに夢中になって、雫が何を喋っていたのかまったく聞いてなかったよ。
「ハンッ! 本当かしら……?
もしかして、私の……は、裸を想像していたんじゃないでしょうね!?
だだ、だとしたら! 今直ぐにこのナイフとフォークで歩の両眼をくりぬいて――」
「まったく、雫ってばそんなわけないじゃないか?
むしろ、そこまで僕が雫の裸を見たか気にするってことは……もしかして、見て欲しかったのかな?」
「そ!? そそそんにゃことにゃいじゃにゃい!!」
……ん? なんて言った?
っていうか、適当に言っただけなのに動揺しすぎじゃないのかな?
「それよりも、話の続きを聞かせてよ。えーと……なんの話だったっけ?」
「ああ、そうだったわね!
そ、その……この後食事が終わった後だけど、歩が良ければ私のおすすめ超B級ホラー小説を紹介してあげなくもないのだけど……
ど、どうかしら?」
フム……。
つまり、素直になれないツンデレな雫の態度からするに要約すると――、
『せっかく、私の家に来たんだし……この際、私のおすすめ超B級ホラー小説を歩に紹介したいわね!
でも、自分から紹介したいって言うのも恥ずかしいから、歩から紹介して欲しいと言った感じにしてくれると嬉しいんだからね!』
見たいな感じかな?
まぁ、ここはおっぱいの件もあるし雫には優しくしてあげよう。
「じゃあ、お言葉に甘えて紹介してもらってもいいかな?」
「そう!? んもぉ~う! 歩がそこまで紹介して欲しいというのなら仕方ないわね♪
ウフフ♪
なら、この『学校一の美少女』の私がプレゼンする『怖がりな雫ちゃんでも全然読める怖くない超B級ホラー小説10選』に『超B級ホラー小説のくせに意外と怖くて最後まで読めなかったけど、いつかは読み切りたいと思っている怖めの超B級ホラー小説5選』なども紹介してあげるわ!」
超B級ホラー小説でも読めなかった物もあるのか……。
しかし、雫ってば怖がりのくせに、何でそんなに多くの超B級ホラー小説を持っているんだろう?
「雫って、何で超B級ホラー小説を読むようになったの?」
「何よ? そんなこと今更聞いて?」
「いや、何か気になって……」
ここで……
『雫って、怖がりのくせに何で読めもしないホラー小説を好きになったの?』
――とか馬鹿正直に聞いてしまったら、
どうせ、いつものごとく雫のマシンガンのようなツンデレ長セリフが罵詈雑言のごとくあふれ出すのは目に見えているので、ここは曖昧に答えておくことにした。
「ふ、ふーん……私が『気になる』のね……?
まぁ、いいわ!
今日は、私のワガママで歩には泊まってもらうわけだし、特別に教えてあげる! 歩、この私の優しさに感謝しなさい♪」
雫のワガママに付き合っているのはいつものことだし、ワガママを聞いたお礼に教えてくれるというのに、さらに感謝を求めるのは傲慢が過ぎるのではないだろうか……?
まったく、雫が傲慢なのはその『おっぱい』だけにして欲しいよね?
――って、あ!
それは『傲慢』じゃなくて『豊満』だったか! HAHAHA♪
「私が超B級ホラー小説を好きになった理由ね……。ねぇ、歩。聞いてる?
なんか、歩から邪な視線を感じるのだけど……?」
おっと、なんか雫が真面目な話をしそうな雰囲気だから、ちゃんと聞いておこう……。
「雫、邪な視線だなんて誤解だよ!?
ぼ、僕はただ……雫と目を合わせるのが恥ずかしくて……ご、ごめんね?
僕がまともに雫の目を見れないような『ぼっち』で……」
「そ、そういうことだったのね!? な、なら、いいのよ……。
どうせ、歩が『ぼっち』なのは今に始まったことでもないもの! フフン♪」
よし、これで雫のおっぱいを正々堂々と見る権利を得たぞ!
「それで、えーと……私が超B級ホラー小説を読むようになったきかっけよね?
歩も気づいてはいると思うけど、私の両親って私が小さいころから共働きなのよ。
それで、小学生の時から一人で留守番することが多くてね……。
流石の私も小学生の頃は一人で留守番をするのが怖いってママとパ――じゃなくて、両親に泣きついていたのよ」
今もまだ僕に泣きついているよね?
あと、今更誤魔化してもママ、パパ呼びバレてるからね?
「そんな時、ママがお留守番できたご褒美よ♪
って、くれたのが……
『トムとランジェリー 呪われた下着ドロボーとヌーブラ』
――って言う一冊の超B級ホラー小説だったのよ」
うん、雫のお母さんは言っちゃ悪いけどバカなんじゃないかな?
「ウフフ♪ 可笑しいでしょう?
ウチのママってね。読書が趣味なんだけど、好きな本の種類が少し変わっているのよね」
少しどころじゃないと思うんだよなぁ……。てか、ご褒美が超B級ホラー小説って……。
「でも、その一冊の超B級ホラー小説が私を『ひとりぼっちのお留守番』から助けてくれたの……。
だって、その本ってば小学生の私が読んでもビックリするほど怖くなかったのよ? そしたら、ママってばなんて言ったと思う?
『あらあら……こんなに怖い本が読めるなら、お留守番も怖くないわね♪』
ですって……?」
なんじゃそりゃ!? 無理矢理にもほどがあるだろ……。
「本当に笑っちゃうわよ……。でも、その超B級ホラー小説が私にとってはお守りなのよ。
家には誰もいないけど、私を思ってお留守番できるたびに買ってくれる全然怖くない超B級ホラー小説の一冊一冊が、ママが私を見てくれている証だったと思うのよね。
だから、私は怖いのも怖くないのも含めて『超B級ホラー小説』が大好きなのよ♪」
そっか……。だから、雫は例え怖くても、頑張ってホラーを楽しもうとしているのかな。
「じゃあ、もっと怖いガチホラーの小説も読めるようにならないとね」
「ええ、ドンと来いよ!
どうせなら、今までちょっと怖くて最後まで読めなかったガチのホラー小説があるから、寝る前にそれを一緒に読むわよ!」
「え、ガチのホラー小説って……大丈夫なの?」
「ええ♪ なんだか今日は……最後まで読める気がするのよ!
ウフフ♪ 歩が一緒だからかしら?」
その時の雫の笑顔はとっても素敵で――、
「じゃあ、一緒に読もうか?」
「うん♪」
この後、読んだホラー小説が思ったよりも怖くて……直ぐに泣き顔になった。
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