第56話「三つの選択肢」
「ど、どうぞ……歩、上がってちょうだい……」
前回のあらすじ、マジで雫のお家にお泊りすることになった。なお、両親は不在の模様……。
ヒャッフゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!
「いい、言っておくけど……これは!
ぼ、ぼっぼぼぼーぼ、ぼーぼぼ、防犯上の理由で歩に泊まってもらうだけで……
そ、それ以上の意味も深い理由もないんだから、勘違いして変な気を起こしたら即刻、外にたたき出すんだからね!?
……ふ、フン!」
……うん、あまりにも『ぼぼぼーぼ』言うから、一瞬奥義でも放つのかと思ったよ。
でも、防犯の理由で僕を泊めるというのもある意味なぁ……だって、ある意味防犯能力下がっているよね?
「……まぁ、でも?
クラスで『ぼっち』の歩にそんな度胸は、ホラー映画で最初に――、
『もうこんな所にいられるか! 俺は出ていくからな!』
――って、最初に逃げ出す登場人物が物語の最後まで生き残れる確率ほどにもないと思うけどね?」
まぁ、雫の言う通り『ぼっち』の僕に二人っきりだからと言って雫をオオカミのごとく襲っちゃう度胸なんて欠片ほどにもないよ?
でも、ここまで言いきられてしまうのは男としてどうなんだろう……?
ということで、少しからかってみることにした。
「でも、最近のホラーはそういうお約束的展開を皆に読まれるから、あえてそういう登場人物を最後まで生かしているパターンもあるよね。
……あれ? ということは、僕にそういう『度胸』がある確率も意外と低くはないのかな……?」
「ほにゃ!? ああ、歩、それって……このケダモノ!
つまり、今までのクソザコ草食系ぼっちはこの『学校一の美少女』の私をパクリと食べちゃうための演技だったのね!?
ちょ、ちょっと! 何でジリジリとこっちににじり寄るのよ! や、やめなさい!
そ、それ以上近づいたらタダじゃ……ら、らめぇ……ふぇえ、あ、謝るから……
ちょっと、まだ心のじゅじゅ、準備が……」
うん、メンタルクソザコかな?
しかし、これ以上やると本気で通報案件になってしまう気がするので、ここら辺で止めておこう。
じゃないと、何かヤバいきがする……。
「なんてね? 雫、冗談だよ。
雫の言う通りクソザコ草食系ぼっちの僕にそんな度胸がああるわけないじゃないか?
アハハ、雫は本当にビビリだなぁ~」
「ぽへぇ……?
――って、は、はぁぁあああああああああああああああああああ!?
歩! アンタふっざけんじゃ無いわよ!?
このママとパパ――じゃなくて、りょ、両親が家にいないこの状況で、私をからかうとかシャレにならないにもほどがあるんからだからね!?
一歩間違えれば警察沙汰に……いいえ、今から私が訴えれば即豚箱行き案件よ! 覚悟の準備をしておきなさい! 近いうちに訴えて――」
「うん、確かに悪ふざけが過ぎたよね?
だけど、雫みたいな『完璧美少女』ならこれくらいで騙されたりはしないから、きっと僕がふざけていただけだって『当然』気づいていたんだよね?」
「――って、っとと、当然でしょう!?
確かに、頭が弱い愚かな人間なら歩程度の演技にも騙されてみっともない姿をさらしたかもしれないわね?
だけど! そう、私は歩が言う通りの『完璧美少女』よ!
ハッ、歩程度の見え見えの演技なんかお正月のおみくじで何事もなく大吉を引き当てるみたいに見抜いていて当然よ!
だ、だから……
まぁ、今回の事に関しては大目に見ても上げなく無いわね! ええ、だって、私は歩が『演技』をしていたって分かっていたんですもの!」
「雫、ありがとう! やっぱり、雫はおっぱいと心がとても大きくて広いや!」
「ムフフン! そうでしょう? そうでしょう?
歩、もっと私のことを褒めても――って、ん? ちょっと、待ちなさい歩!
今、貴方なんて言ったのかしら?」
「……え? 雫は美人で優しくて、超心の広い『美少女』だなぁ~的なことを言ったはずだよ?」
「そ、そうよね! ええ、何でも無いわ。私の聞き間違いのようね」
よし、チョロいぜ!
「ところで、歩は家に帰ったらごはんとお風呂どっちを先に済ませるタイプかしら?
今日は私の勝手な事情で歩に泊まってもらうわけだから……ごはんか風呂、どっちを先に用意するかは歩に選ばせてあげるわ!
ウフフ、この私に感謝しなさい♪
さぁ、歩……ごはんにする? お風呂にする?
そ、それとも……」
え、雫? そのパータンって、もしかして、三つ目の選択肢は――、
「
……この女は怖がりのくせに、何故そうまでして怖い物をに触れたがるのだろうか?
生粋のドMなのかな?
「雫って、家に帰るとお風呂や食事をする前にホラーゲームをする習慣でもあるの?」
「ち、違うわよ! ただ、今日は歩がいるから……
い、いつもは怖くて最後までプレイできなかったホラゲも歩と一緒ならできるかと思って……べべ、別に!
私が歩と一緒にホラゲをプレイしてみたいとかじゃなくて……あ、歩がホラゲとか好きそうだから!
そう!
歩が好きそうなホラゲがあるし、せっかくウチに泊まっていくのだからおもてなしの一環として『ホラーゲーム』を一緒にプレイしないかしら?
という気遣いなんだから、勘違いしないでよね!」
「じゃあ、家に帰ったら……
『お風呂や食事をする前にホラーゲームを起動するけど、最初のオープニングを見ただけで怖くなって、結局やらずに諦めてお風呂に入る……』
――なんて習慣は特にないんだね?」
「どど、どうしてそれを!?
――って、そそ、そんなことあるわけないにゃない!!
わわ、私は『学校一の美少女』であり、ご近所でも『あの子は諦めが悪い』ともっぱらの評判なのよ!
そんな私がゲームを起動しただけで出てくるゾンビ猿の顔面ドアップだけでビビってプレイするのを諦める女に思えるのかしら!?」
どうやら、雫の言うホラーゲームにはオープニングでゾンビ猿の顔面ドアップが出てくるらしい。そりゃあ、雫には無理だろうな。
「うん、そうだよね! 雫のことだからそんなことありえないよね。
きっと、帰ったら直ぐにお風呂に入るんだよね?
因みに、雫はお風呂は体のどこから洗い始めるのかな?」
「そんなの足から洗うに決まっているじゃない? ええ、そうよ!
この『学校一の美少女』である私にとって、そのような愚かな習慣なんてありえないのよ!」
しかし、そうか……雫はお風呂は足から洗うタイプなのか……。
うん、今夜のお風呂が楽しみです!
「――ん? ちょっと、歩。
貴方今、どさくさ紛れて何か変な質問をしなかったかしら?」
「え、変な質問……?
えーと……『ごはんにする? お風呂にする?』って、なんか新婚さんみたいだよね。みたいな質問かな?」
「んなーっ!? しし、新婚さんって! 歩!!
貴方は何をバカなことを言っているのかしら!? もう! 本当にバカじゃないの!?
いい? 何度も言うけど、このお泊りにおいて歩はただの『ボディーガード』で呼んだだけなんだから、そんなし、新婚さんなんて……
あ、ありえないんだからね!?」
「う、うん、そうだよね……。雫、ゴメンね? なんか変なこと言っちゃって……」
「ほ、本当に……まったくよ!
もう……でも、別に嫌では無いけどね……」ボソ
「え、もっと『いじって欲しい』だって……?」
「そんなこと言ってないでしょ!?」
「じょ、冗談だよ……。
だから、そんなに怒らないでね?」
でも『嫌じゃない』って……やっぱり、雫は『ドM』なのかな?
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