第53話「たった一つの理にかなった克服方法」
「何でも一人でやらなきゃいけない道理なんてどこにもないのよ!」
前回のあらすじ、雫とガチのホラー映画を見ることになった。
というわけで、放課後いつもの映画館に来た僕と雫だが……。
「雫が見たいホラー映画ってこの『NP ~ノッポ/それが伸びたら終わり~』でいいのかな?」
これって確か……図書室で雫が怖くて読めなかったホラー小説と同じタイトルだよね?
「ええ、そうよ! さっき私が読んでいたホラー小説はこの映画の原作小説だったのよ!
確かに、私は恐怖に負けてこのホラー小説を読むことはできなかったわ……。だけど、気づいたのよ!
そう言えば私って歩の卑怯な策略に騙されたとはいえ、既に何回も怖くて見ることができないはずのホラー映画を見ているじゃない!
つまり、怖くてホラー小説が読めなくても、複数人で見ることができる映画というジャンルなら、例えそれが『ホラー映画』だとしても見ることができるということじゃないかしら!?
そして、既に何回もホラー映画を見ている私は『怖がり』を克服していると言っても過言ではないんじゃないかしら!?
今日はそれを、あえて自分からホラー映画を見に行くことで証明しようという目論見よ!」
いや、過言だと思うよ?
だって、今まで雫が僕に騙されてホラー映画を見た中で号泣しなかった時が無かったよね?
つまり、全戦全敗中だよ? 勝率0%だよ?
多分、それって俗に言う負け戦って奴だと思うけどなぁ……。
「うん、そうだね!
確かに、雫の言う通り言われるまでは気づかなかったけど……もしかしたら、もう何度もホラー映画を見ている雫は『怖がり』を克服していると言っても過言ではないよね!
雫、僕が保証するよ!」
でも、面白そうなので、このまま突撃させてみることにした。
「そうよね! 流石は歩だわ!
歩なら、この私の完璧な理論を応援してくれると思ったのよ♪
べ、別に……歩を誘ったのは私にホラー映画を一緒に見てくれる友達がいないとかじゃなくて……そ、そう!
私がここまで怖くて普段は見れないはずのホラー映画を見たいと思うようになったのは、歩が何度も私を騙して無理矢理ホラー映画を見せた所為でもあるのよ!
つまり、歩が私をそういう体にしたわけで……せ、責任を持って歩が私のホラー克服に付き合うのは当然の権利なのよ!
だから、勘違いしないでよね!?」
僕が『雫をそういう体にした』って響き、なんかエロいな……。
畜生、できれば録音しておけば良かった!!
今度から、雫の言動はすべて録音しておいた方が良いかもしれないな……。
「因みに、雫。これって、僕は内容知らないんだけど、どんなホラー映画なのかな?」
「フフン! 歩がそう言うと思って入り口でこの映画のチラシをもらっておいたわ!
これに、簡単なあらすじがあるから、今の内に読んでおきなさい♪」
「雫、ありがとう。えっと『NP ~ノッポ/それが伸びたら終わり~』のあらすじ……」
なんかタイトル的にそんな怖いホラー映画には思えないんだけど、どれどれ……?
『NP ~ノッポ/それが伸びたら終わり~』
ある日、しがないサラリーマンのジョージ郎は何の変哲もない日常を過ごしていた。
しかし、彼はひょんなことから、超能力を具現化、擬人化した不思議な力……名付けて『ペタンド』を発現したことで彼の運命は変わる!
ジョージ郎のペタンド『ペイニーワーズ』は彼に言う。
「ヘイ、ジョージ郎……これから、
ペタンド使いは引かれ合う。逃げることは許されない……」
時を同じくしてジョージ郎の町で人々の身長が伸びてやがれ破裂するという『ノッポ連続爆破事件』が起きる。
そして、ついにジョージ郎の身長も伸び始めて……。
「ヘイ、ジョージ郎……これは敵のペタンド攻撃だ。
敵はお前を殺すまでこの『ノッポ連続爆破事件』は終わらない……。
次に、お前の身長が伸び始めたら終わりだ……」
「嫌だ! ぼ、僕はまだ成長期なんだ!」
「ヘイ、ジョージ郎……三十路を超えた大人に成長期は来ない……。
戦え、戦うんだジョージ郎……戦わなければ生き残れない……」
身長が伸びて爆発する前に、ジョージ郎は見えないペタンド使いを探し出して倒すことはできるのか!?
そして、ジョージ郎にピエロ姿の爆弾魔が現れて――、
驚愕のサスペンスバトルホラー!
『NP ~ノッポ/それが伸びたら終わり~』絶賛公開中!
なるほど、以上がこの映画のあらすじかぁ……。
「ねぇ、雫……これって本当にガチホラー映画なの?」
なんか、僕にはどうみても『超B級ホラー映画』にしか見えないんだけどなぁ……。
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