第49話「君の笑顔が見たくて」
「まず三年はそういう……え、エッチな言動は控えるべきね!」 ムッフン!
前回のあらすじ、雫が僕にエッチな約束をしてくれました。
……うん、以上!
「えっと……それで、雫が僕におっぱいを揉ませようとしてまで思いだして欲しかった罪って、一体どんなことだったのかな?」
「おっぱいを揉ませようとなんてしてないわよ!
というか、歩はこの映画館で私に散々してみた『罪』を覚えてないだけでなく、ついさっき私が言った『エッチな言動を控える』ことすら覚えられないのかしら!?
まぁ、いいわ……。
歩の脳みそがニワトリよりも小さくて、自らが犯してきた過ちを思い出せないと言うのなら、私がその罪を暴いてあげるわ!
さぁ、貴方の罪を数えなさい!」
何、その何処かの探偵が言いそうなキメ台詞?
「歩、貴方の罪とは……そう、映画よ!
貴方ってば、この映画館に来るたび、来るたびに……私に『超B級ホラー映画』と見せかけて、ただの『ホラー映画』を幾度となく見せてくれたわよね!?
ここまで言ってあげて、思い出せないなんて絶対に言わせないんだからね!?」
「うーん……あぁ、あれか!」
というか、あれは引っかかる雫の方が悪いと思うんだよね……。
「鬼畜で人でなしの歩のことだから、どうせまた超B級ホラー映画に見せかけてガチのホラー映画を私に見せようって魂胆なんでしょう!?
いくら、私が人を疑うことを知らない純粋無垢な『学校一の美少女』だとしても、これほどまでに騙され続ければ学習するってものよ!
さぁ、歩!
今、貴方が私に見せようとしている映画のタイトルをここで言ってみなさいな! 貴方がどんなにそれを怖くない超B級ホラーだと言い張ろうとしても、この私がその嘘を見破ってあげるんだからね!」
ふむ……。どうやら、雫はこの僕が意地悪で雫にガチのホラー映画を見せようと疑っているらしい。
なんて心外なんだ!
ただ、僕は日頃の手作り弁当の感謝を映画で返したいと思っているだけだと言うのに……。
その証拠に今日、僕が雫に見せようとした映画のタイトルは――、
「『ジョーカー ~あなたが笑う番です~』って、タイトルの映画だね」
「ほら見なさい! 誰がどう見ても、ガチのホラー映画のタイトルじゃないのよ!?」
「いや、雫! 待って欲しい!
そもそも、雫はこれがどんな映画か知っているのかな……?」
「知らないわよ! でも、どうせまたなんだかんだ言って、ただのガチホラー映画何でしょう!?
今度という今度こそは、歩が何を言おうと騙されたりしないんだからね!?
その対策に、歩の言い分なんて一切聞いてあげないんだから!
例え、歩がどんな言い訳をしようともその言葉は私の耳には届かないと思い知りなさい!
貴方がここで泣き叫ぼうが、許しを願おうとも私は歩の言葉の一切合切を聞いたりしてあげないんだからね!?
それに、今日見る映画は私が自分で決めて――」
「まぁ、雫が『僕の薦める映画が怖い』と言うのなら、無理強いはしないよ……」
「……はぁ? 歩! ちょっと、待ちなさい!
貴方……今なんて言ったかしら?
この勇猛果敢である『学校一の美少女』の私が歩ごときの『ぼっち』が薦める映画を『怖い』ですって?
フッ、流石にそれは失礼しちゃうわね……?
数々の読んでみたらそこそこ怖かった超B級ホラー小説や映画を制覇してきた百戦錬磨の私に向かって『怖い』とは良く言えたものね?
ええ、良いわ!
歩がそこまで言うのなら、貴方が薦めて来た映画がどんな内容なのか聞くくらいどうってこと無いわよ!
どうせまたしょうもないガチのホラー映画だとは思うけど……べ、別にガチホラーが怖いから見たくないってことじゃなくて……
こ、これは! ただ単に、私は『超B級ホラー映画』が好きなだけで、ただの『ガチホラー』には興味が無いってだけなんだからね!?
だから、歩の説明を聞くのが『怖い』なんてことはあり得ないわ!
ええ、私の辞書に『怖い』なんて二文字は存在しないよ!」
……いや、前にホラー映画を見ちゃった時とか、めちゃくちゃ怖がってたよね?
まぁ、いいか。せっかく、雫が僕の説明を聞いてくれるって言うんだからね♪
「じゃあ、雫が怖くないって言うから説明するね? 雫、これはホラー映画じゃなくてコメディー映画なんだよ!」
「はぁ……? 歩、貴方今これがコメディーって言ったかしら?
この不気味なピエロの化粧をした男がポスターに映っている映画のどこが『コメディー』だっていうのよ!?
流石に、そんなマサイ族並みの視力で見る景色ほどに見え見えで真っ赤な嘘に、この才色兼備で、某見た目は子供頭脳は大人な子供探偵もビックリの推理力を誇る『学校一の名探偵美少女』雫ちゃんの曇りなき
某見た目は子供頭脳は大人な子供探偵もビックリの推理力を誇る癖に、今まで何度も騙され続けて来たのか……。
「うん、確かに雫が言うようにこのポスターだけを見たら、不気味に笑うピエロが移っているだけだし、単純なサスペンスホラー映画に見えるかもしれない……。
だけど、少し考えて見てくれないかな?
その才色兼備で、某見た目は子供頭脳は大人な子供探偵もビックリの推理力を誇る雫を、今まで何度も騙してきた僕が、こんなマサイ族並みの視力で見る景色ほどに見え見えの真っ赤な嘘をつくと思うかい?」
「うにゅ、言われてみればそうね……」
「つまり、本当にこれはただのコメディー映画なんだよ!
内容も『どんな時も笑顔で人を楽しませなさい』と言われて育った主人公が本物のピエロを目指して、世界中の皆を笑顔にするために七転八倒するお話なんだ!」
「へぇ、そう言われると面白そうじゃない……。
でも、歩は何で急にこんなコメディー映画を私に見せようとしたのかしら……?」
「そ、それは……」
「むむむっ!? 歩! そこで口ごもるってことは……
やっぱり、今のは全部口から出た出まかせで――」
「えっと、雫にも笑顔になって欲しかったから……」
「…………ほへ?
ねぇ、歩。それって……」
「ぼ、僕達って……い、一応は『付き合っているフリ』をしているわけだよね?
だから、少しはその……カップルらしいことをした方が良いかと思って……ご、ゴメン!
僕みたいな『ぼっち』がいきなりこんなこと言っても、気持ち悪いだけだよね!?
ぼ、僕ってば一体何を言っているのかな……。うん! やっぱり、今日は雫が見たい映画を見よ――」
「し、仕方ないわね! じゃあ、今日はその映画を見るわよ!」
「え、雫……いいの?」
「だって、歩がせっかく私のためを思って選んでくれた映画なんだし……
か、勘違いしないでよね!?
これは、歩の気持ちを大切にしたいなんて乙女心なんかじゃなくて、そ、そのぉ……そう!
歩の説明が面白かったのよ!
歩が説明してくれた映画の内容があまりにも面白そうで、私の超B級映画を感じ取るセンサーがビンビンに反応をしめたから見る気になっただけ……
だから、純粋に『私』がその映画を見たくなっただけで……
あ、歩のためじゃないんだからね!!」
「……うん、そうだね。雫、ありがとう」
「べ、別に……お礼なんて言われる必要なんかないんだから……」
「あはは、そうだね♪」
でも、ありがとう……。
まぁ、ホントはただの『サスペンスホラー映画』なんだけどね♪
「さぁ、歩! そうと決まったらさっそくチケットを買うのよ!」
「うん、じゃあチケット買ってくるね」
因みに……
この後、雫にめちゃくちゃ怒られた。
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