第48話「エッチな約束」


「私だって、いつも騙されてばっかりじゃないのよ!」



 今日も今日とていつもの放課後、映画館に来た雫は突如、そんなことを言いだした。



「雫、いきなりそんな大声出してどうしたの……迷惑だよ?」



 今日は僕が雫に定期的にお弁当を作ってきてもらっているお礼として、恒例になっている雫の好きな映画を僕のおごりとして一緒に見る日だ。


 だから、こうして放課後に雫が好きな超B級ホラーが上映している映画館まで来たわけだけど……



「ちょっと、歩!

 私が何でこんな宣言を突如したのか? 心当たりが無いと言うのかしら!?

 だとしたら、貴方はその胸に手を当てて自分がこれまでに犯した罪を深海よりも深く考え見つめなおす必要があるわ!」



 ……はて、僕がこれまでに犯した罪とは一体何だろう?


 とりあえず、分からないので雫が言った通り胸に手を当てて考えることにしよう。


 そう思って、僕は自分の手を雫のおっぱいに押し当てて――、



「――って、歩ぅううううううううう!?

 ああ、あ……貴方は一体何をしようとしているのかしら!?!?!?」



 ――と、残念なことに僕の手は雫のおっぱいに触れる前に、そのおっぱいの持ち主である雫の手によって叩き落とされてしまった。


 痛ってぇ……



「何って、雫が『胸に手を当てて考えろ』って言うから……」


「誰が『私の胸に手を当てろ』なんて言ったのよ!?」


「でも『誰の胸に』なんて言わなかったじゃないか!」


「当たり前でしょう!?

 普通は『胸に手を当てて考えろ』って、言われたら『自分の胸』に手を当てるでしょうが!」


「何が悲しくて、自分の胸の感触を堪能しなきゃいけないのさ!?

 だったら、僕は雫のおっぱいの方が揉みたいです!!」


「んなっ! あ、歩ってば……バカじゃないの!?

 大体、この『学校一の美少女』である私の胸を歩ごときが揉みたいとか片腹痛いのよ!

 歩は、石の上にも三年ということわざを知っているかしら? どうせ、無知な歩のことだから知らないでしょうね。

 いいわ! なら、この私が意味を教えてあげる!


 石の上にも三年とは、冷たい石の上にも長い間座り続ければ徐々に温まってくるという喩えを用いた――、


『どんなことも辛抱すればいつかは成し遂げられる』


 という意味なのよ!

 つまり、歩に足りないのはそれなの! 歩には『我慢』というものが足りないわ!

 だって、歩ってば口を開けば……直ぐに『おっぱい』や『パンツ』とかって……

 え、エッチなことしか言わないんだもん!」


「雫! 今の『え、エッチなことしか~』の部分をワンモアプリーズ!」


「ほら! そう言うとこを言っているのよ!

 歩も仮とは言え私の『彼氏』のフリをしている自覚があるのなら『学校一の美少女』の隣に立つ男として恥ずかしくないような言動と立ち振る舞いを覚えるべきなのよ!

 そう、だからことわざに習うのなら、まず三年はそういう……

 え、エッチな言動は控えるべきね!」 ムッフン!



 ……つまり、三年我慢すれば、僕は雫のおっぱいを揉めるということだろうか?


 よし、今の言質取ったぞ!


 エッチな言動を控えるのは無理だから、三年が経ったら……


『三年待ったら、おっぱい揉ませてくれるって言ったじゃないか!』


 ――って、言って雫を困らせよう。


 雫のことだから、どうせ三年前に自分がなんて言ったかなんて覚えてないだろうし、僕が無理矢理『そう言ったもん!』って泣き叫べながら訴えたらワンチャン行けそうな気がするぞ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る