第47話「これはツンデレですか?」
「私達もそろそろ、学食で食事をするべきだと思うのよね!」
今日も今日とていつものお昼休み、恒例となった雫の手作りお弁当を図書室で食べ終わると、雫がそんなことを言いだした。
「ご馳走様でした……。それで、雫。突然、どうしたのさ?
そもそも、僕達が図書室でお弁当を食べているのって、元々は雫が『僕と一緒に食べているのを見られるのが恥ずかしい』って理由じゃなかったっけ?」
この女の記憶力は大丈夫だろうか?
僕が雫の頭の心配をしていると、雫はいつものようにしゃべり始めた。
「お粗末様……。ええ、そうね!
歩の言う通り確かに私は前に学食で食べるということを提案された時に『カップルに見られるのが生理的に無理』と言ってその提案を断ったわ!」
先生ー! 流石に『生理的に無理』とまでは言ってなかった気がしまーす!
というかその表現は僕が普通に傷つきまーす!
確か『カップルみたいに思われるじゃない……』のようなちょっと萌える感じだったと思うんですけどね……?
「でも、歩! その発想は既に古いのよ!
そう、時代というのは常に動き続けて変化するもの! なら、この私達の思想にも変化が必要なのよ!
だって、私は何と言っても『学校一の美少女』よ! そんな私はこの常に変わりゆく世の中にも柔軟に対応できるの!
だからこそ、今日というこの日に……私は過去の自分が下した決断に変化を求めるわ!」
「……つまり、どういうこと?」
ヤバイ、食後で腹が膨れたからなんか眠くなってきたな……。睡魔で雫の話がおっぱいのサイスしか視界に映らないや……。
「もう、歩ってば鈍いわね……。
この私がここまで言っても分からないとか、例え仮の彼氏だとしても自覚が足りないのではないかしら?
つまり、明日から普通に学食で食べようと言っているのよ!
そ、それくらい……分かりなさいよね!?」
なるほど……つまり、明日からは学食で雫のおっぱい――、
じゃなくてお弁当を食べられるということか……。
「でも、雫。一緒に学食で食べるのは恥ずかしいんじゃなかったの?」
「そうね! 確かに、私ともあろう『学校一の美少女』が歩ごとき『ぼっち』を仮とは言え、彼氏役としてお昼を一緒に過ごすなんて光景をこの学校の皆に見せるのは、私の『学校一の美少女』というブランドを著しく落とす行為に他ならないわ!」
いや、そこまで言わなくても良くないかな……?
まぁ、でも……確かに、僕みたいなぼっちが見た目だけは『学校一の美少女』である雫とこうして一緒にお昼を過ごしているのがバレてしまったら、この学校中が大騒ぎになる可能性はあるな……。
「だけど、歩。
私達がこうして恋人同士のフリをしたきっかけを思いだして欲しいのよ!」
「えっと……確か、隠れドMの雫が僕の弄りプレイの虜になったからだっけ?」
「貴方、ぶっ飛ばすわよ!?
いい? くれぐれも、他の生徒にそんなふざけた嘘をバラまこうとするんじゃないわよ!
そもそも、私達が恋人同士のフリをしているのは『学校一の美少女』である私の男避けのためよ!
なのに、気づいたら私ってば放課後に歩とコソコソ会っているだけじゃない! これじゃあ、なんのために付き合っているフリをしているのか分からないわ!
べ、別に……歩とコソコソ会うのが面倒で、いい加減に皆の前で歩と堂々と会うきっかけが欲しいとか……
そんな理由があるわけじゃないんだから、勘違いしないでよね!?」
「そんなのわざわざ言わなくても分かっているって……」
流石の僕でも、雫にそんな風に思われていると思うほどうぬぼれてないからね?
「つまり、雫は恥ずかしいのを我慢してでも『彼氏がいる』というアピールをしたいというわけだね?」
だから、最初に『過去の自分が下した決断に変化を求める』とか一見すると頭が良さそうに思えるバカっぽいことを言っていたのか……。
「しかし、変化ねぇ……」
「歩、何よ? もしかして、この私が下した決断に異議を唱えると言うのかしら? だとしたら、愚かにもほどがあると言うのね。貴方は私と仮とはいえ恋人同士のフリをしているわけだけど、この関係のパワーバランスは私と歩では『10対0』なのよ!
つまり、立場は私の方が圧倒的に上!
だから、歩みたいな『ぼっち』に発言権があると――」
「あ、ところで雫。明日のお弁当は僕、唐揚げが食べたいかな?」
「え? ちょっと、歩。今話している最中なんだけど分かるかしら?
もう、唐揚げね? 仕方ないわね……」
「あと、オクラは苦手だから、あまり入れないで欲しいな……。
サラダなら、シーザーサラダとかの方が好きかも?」
「何よ? まったく、今日は要求が多いのね……。
いいわ! なら、歩が『美味ぴぃ!』って言うようなとびっきりのシーザーサラダを作って来てみせるんだからね♪」
……うん、意外と甘々だった。
「えっと……どこまで言ったかしら?」
「確か『立場は私の方が圧倒的に上! だから、歩みたいな『ぼっち』に発言権があると――』の所までだね」
「そう! つまり、発言権があると思ったら、大間違いなんだからね!」
まぁ、雫の言う通り『学校一の美少女』である彼女とくらべたら『ぼっち』の僕なんかがこんなお弁当作ってもらったり一緒にいるのがおかしい関係ではあるんだよね。
しかし、いい加減睡魔が限界になってきたな……。
いつもなら、視線が雫のおっぱいに行くはずなのに、もう眠すぎて雫のおっぱいよりも、あの柔らかそうな膝の上で寝たいという欲求が勝って雫の膝にしか視線がいかないくらいに眠い……。
うーん、チョロい雫のことだしお願いしたらワンチャンあの膝の上で眠らせてはくれないだろうか……?
「ところで、雫。一つだけお願いがあるんだけどいいいかな……?
「何よ? 歩ってば、私がお弁当のリクエストを聞いてあげたからって調子に乗ってさらに追加のお願いをしようというのかしら?
だとしたら、この私を甘く見過ぎってものよ!
いい? 私は身内には厳しいことでご近所の間では有名なんだからね!
――って、こ、これは!
別に、歩が私にとって身内というほど近い存在って言う意味じゃなくて……下部?
そう! 下部よ!
もはや、歩はこの私にとって『下部』と言ってもいいほどの存在って意味なんだから、勘違いしないでよね!?
まぁ、でも……?
いくら、歩がこの私にとって『下部』というような存在であっても、私は将来仕事では『部下に優しい上司』を理想とする女よ!
だからこそ、下部のような存在である歩にも少しくらい優しくしてあげなくもないわね……。
いいわ、歩!
そこまで言うのならその『お願い』とやらを言ってみなさ――
――って、うひゃ!? あ、歩!?
なな、何をして……何で勝手に私の膝に頭を乗せているのかしら……?」
そう、雫の許可を得る前に僕は睡魔と雫の膝の誘惑に耐え切れず、その膝の上に倒れこむように頭を乗せてしまっていた。
だって、雫の話が長いんだもん……。
まぁ、雫も『将来仕事では部下にやらしい上司を理想とする』とか言ってたし……
もう、事後申告でいいよね?
「ゴメン、雫。眠いから、ここで少し寝てもいいかな……?」
「歩! だからって、許可も取らないで――、
って、もう……仕方ないわね。
そんなに眠いのなら少しだけよ?」
「やっぱり……」
「なによ……?」
「図書室の方が寝れるからいいね……」
「そう……じゃあ、しばらくは図書室でもいいわね……」
……うん。やっぱり、雫は甘々だった。
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