第46話「むっつりスケベ」
「あ、歩! この私が歩みたいな『ぼっち』にしがみつくなんて普通ならありえないことなんだから感謝しなさいよね!?」
前回のあらすじ、傘を忘れた雫を僕の傘の中に入れてあげる条件として、相合傘の最中『雫は僕の腕にしがみつく』という見返りを要求してみた。
いやぁ~、腕に押し付けられる
「ねぇ、雫。このままだと僕の肩が傘からはみ出て濡れちゃうから、もう少し強くしがみついてくれないかな?」
「へ!? こ、こうかしら……?」
「ゴメン、もう少し詰めてくれるかな?」
「で、でも……これ以上密着すると……
その……む、胸が……」
「あ、そうだね……。
じゃあ、もうちょっと『おっぱい』を押し付ける感じでお願いします!」
「貴方、わざとやっているでしょう!?」
因みに、肩が傘からはみ出るというのも嘘です。
「ハッ! 歩ったら、本当に下心丸出しで嫌になっちゃうわ!
で、でも……この私に対してそう言う感情を抱いてしまうのは仕方のないことかもしれないわね?
だって、そう! 私は『学校一の美少女』ですもの!
その私とこの雨のを理由に一緒に帰れるとなったら……
歩みたいな女性に縁のない『ぼっち』なら、それはもう卑猥な妄想の一つや二つくらい――って!
こ、この私に卑猥な妄想をしたら、いくら歩でも許さないんだかね!?
せ、精々……許しても手を繋ぐとかそういうレベルの妄想にとどめておきなさい!
い、いいわね!?」
何やら、雫が自分で勝手に盛り上がって変な想像をした挙句、それを突然僕のせいにしてきたんだけど……
ありえないくらい理不尽じゃないかな?
まぁ、一人で勝手に調子に乗って、一人で勝手に盛り上がった挙句、一人で勝手に自爆して赤面する雫は可愛かったけどね。
でも、僕が『雫で卑猥な妄想をしている』という言いがかりには心当たりしかなくて逆に不愉快なので、ここはお仕置きが必要だと思うんですよ。
なので、僕は腕にしがみつく雫を無理矢理振り切って、この雨の中を傘を持ちながら突然走り出したのである。
「どうやら、雫は僕と一緒にいるのが嫌な見たいだから、ここからは僕一人で帰るね!」
「ヘァ!? ちょ、ちょっと、歩!?
ま、待って! 傘! お願い! 傘を持っていかないで! 私が雨で濡れちゃうでしょう!? だ、だから――、
この雨の中で私を置いて行かないでぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
結果、雫が泣いてしまうので、僕は仕方なく雨に打たれた雫を傘の中に入れてあげることにした。
「ねぇ、雫。その状態で腕にしがみつかれると僕まで地味に濡れるんだけど……」
「誰のせいでここまで濡れたと思っているのよ!?
――って、ぬ『濡れた』と言ってもそういう意味じゃなくて……
純粋に『服が濡れた』って意味なんだからね!?
ま、まったく……歩ってばこんなくだらないことを私に言わせるためだけにそういう『フリ』を投げるの止めてくれるかしら?
まぁ、今回は私が優秀なおかげで歩の『そういう罠』にも気づくことができたけど?
もう、私だって『学校一の美少女』という看板があるからにはそういう『品の無い発言』はしたくないのよ!
……分かるかしら?
だけど、歩が『学校一の美少女』という私と一緒に帰っている以上、何かしらのちょっかいを出したいという気持ちも分からなくもないわ。
だってそう! 何度も言うけど私は『学校一の美少女』だから!
こんな美少女を目の前にして、歩もちょっかいを出すほど平常心ではいられないということよね? ウフフ♪
なら、今回は歩の要望通り、む、胸を……
少しだけだけど、腕に押し付けてあげるから、これで勘弁しなさいよね!」
「…………?」
一体、この女はさっきから何を言っているのだろう?
何故か、知らないうちに僕が雫に『卑猥な発言』をさせようとしたことになっているらしいけど……
正直、さっきの発言のどこにそんな要素があったのかまったく分からないんだけど?
しかし、そのことを雫に正直に伝えてしまうと、きっと理不尽な逆ギレに合うような気もするので、ここは下手に指摘しないのが吉なんじゃないのかな?
なんか、おまけに雫がおっぱいを押し付けてくれたことだしね♪
だけど、これだけは言っておこう……。
「雫って意外と『むっつり』だよね……」
「は……はぁああ!? ちょっと、歩! それは一体どういうことよ!
それを言うのなら、歩の方でしょうが!?
大体、私は――」
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