第42話「僕のターン!」



「もう! い、いくら歩でも……うつ伏せになるのは禁止なんだからね!

 べ、別に、膝の匂いを嗅がれるのが恥ずかしいってわけじゃないわよ?」



 前回のあらすじ、僕が雫の膝枕にうつ伏せでダイブしたらめっちゃ怒られた。



「雫、ゴメンって確かにうつ伏せでダイブしたのは悪かったよ。

 でも、これは雫にも原因があると思うんだ」



 とりあえず、状況証拠からして僕にしか非が無いのは確かなのだが、雫なら上手く言いくるめればなんとかできそうなので、屁理屈を言ってみることにした。



「はぁ? 歩ってば何を言うかと思えば……

 言うに事欠いて『私が悪い』ですって!?

 それは一体どいう意味かしら?

 この『学校一の美少女』である私に罪を擦り付けようとはいい度胸ね!

 もし、下手な屁理屈を言うようなら……

 この罰は神や仏が許しても、私が月に代わって歩にしかるべき罰を与えてあげるんだから、覚悟の準備をしておくことね!」



 ふむ……雫に罪を擦り付けようとしたら、雫が某新人ギャングみたになってしまった。


 さて、下手な言い訳だと罰を与えられてしまうみたいだけど、一体どんな罰を与えてくれるのかな?


 罰も楽しみだけど、とりあえずは目の前の雫の怒りを鎮めることにしよう。



「雫、ゴメンよ。僕が雫に原因があると言ったのは決して『雫が悪い』っていう意味でいったんじゃなくて……

 雫の膝が『魅力的すぎる』のがいけないって言いたかったんだよ!」


「……はぁ? 歩、それは一体どいう意味かしら?」



 よし、雫が食いついた!


 しかし、意外と一番安いネタに食いついたな……。まぁ、いいか。


 このままいつもの調子で膝枕の件をうやむやにしてしまおう。



「だってさ、考えても見てよ?

 僕は雫の言う通りただの『ぼっち』だよ?

 そんな男が『学校一の美少女』というこの世の中に存在する中で史上最高の膝を持つ女性の『膝枕』を目の前に出されて……


 それに『むしゃぶりつきたい』という欲望を抑えられるだろうか!?


 いや、断言する……無理だね!」 キリッ!


「――ハッ! い、言われてみれば……

 確かにだわ!」 ピシャーン! ← 雫の巨乳に電流が走る音!



 よし、落ちたな……。



「だよね! そう無理なんだよ!

 確かに、一番悪いのは誘惑に負けた弱い僕の心なのかもしれない……。

 だけど、雫の『膝枕』にダイブしたいなんて欲望を抑えられるほど僕が強くないんだ!

 むしろ、そんな欲望を抱かせるほど雫の『膝枕』というのは魅力的で仕方ないと言えるんじゃないかな!?」



 僕のその必死な熱弁(屁理屈)を聞き終わると、雫はその大きな胸をブルンと揺らしながら意気揚々としゃべり始めた。



「ふ、ふぅ~ん……。まぁ、そうね!

 歩の言う通り、私はなんたって『学校一の美少女』だから……?

 そう、歩ごとき一人の『ぼっち』からしたら、この私の『膝枕』はまさにエデンの園に実る『禁断の果実』のごとき存在に映ったとしてもおかしくはないわね!

 それは例えるのなら……そう!


  和牛で言えば天然の霜降りがたっぷりと入ったお肉のように……っ!

   花で例えるのなら、実現は不可能とされた青いバラのように……

    または、飢えに飢えた旅人が砂漠の中でついぞ見つけた小さなオアシスの泉のように……っ!


 それはそれは犯罪的で悪魔的な魅力を放つ『膝枕』でしかないでしょうね!

 確かに、そう言われてしまうとこれは私が『魅力的すぎた』のが原因と言ってもおかしくないわね♪

 ええ、いいわ!

 歩、私も悪かったと認めてあげる。だから、今回の件は水に流してあげるわ!

 ムフフン♪」


「本当!? 流石は雫!

 僕が誘惑に勝てなかったのが悪いとはいえ、それを全て水に流してくれるなんて、雫はなんて優しいんだチョロイんだ!」


「や、やめなさいよ……。そんなに煽てられたって――」


「雫は最高だぜ! ビバ雫! 雫バンザーイ!」


「明日のお弁当のおかずがちょっと豪華になるだけで、何も出ないんだからね?」


「じゃあ、本当に膝枕の件はもう何も怒ってないんだよね?」


「しつこいわね。怒ってないって言ったでしょう?

 ムフフン『学校一の美少女』に二言はないわ!」


「本当に雫は優しいや! ありがとう、雫!」


「もう、歩ったらそんなに褒めてどうしたのよ?

 別に、それだけ褒めちぎられると流石の私も恥ずかしくなるのだけど……

 でも、歩が『学校一の美少女』である私を褒めたいと言うのなら、もっと続けても――」


「だから、次は雫の番だよね?」


「……ぱぁ?」



 さて、ここからが僕の反撃のターンだね♪


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