第35話「その結果は……」



「ちょっと、歩……誠意ってなによ?」



 前回のあらすじ、罰としてこれから雫をからかいます。


 いや、だってそうでしょう?


 雫ってばいくら自分が『学校一の美少女』だからって……


『告白ごっこ』はヒドイと思うんだよ!


 そりゃあ『ぼっち』の僕に雫が告白するなんて、転地がひっくり返ってもありえないのはわかっているよ?


 最初は少し騙されそうにはなったけど……でも、後半の『彼氏(奴隷)になりなさい』宣言で――、



(あぁ、これは僕をからかっているだけなんだな……)



 ――って、僕は気づいたのさ!


 でもね? 雫みたいな見た目だけは『学校一の美少女』に告白されたら誰だって『ドキッ!』とはしちゃうじゃないか!


 というわけで……


『ぼっち』の純情な心をもてあそんだ雫ちゃんにはお仕置きです!



「誠意っていうのは言葉のとおりだよ。

 だって雫は僕に『告白』しているわけじゃなくて、これはあくまで、偽の彼氏になる『お願い』なんだよね?」


「こ、告白って……だから違うって言っているでしょう!

 そうよ! この『学校一の美少女』である私が歩みたいな『ぼっち』に告白なんてするわけないじゃない!

 だからこれは貴方の言うとおり単なる彼氏役になる『お願い』と言っても差し支えないわね……?

 ふ、フン!」


「そうだね……。でもさ、雫?

 おねがいと言うのなら――、

 あの言い方は『誠意』がないんじゃないかな?」


「何よ。誠意ってそういう……ハッ!

 まさか、貴方……っ!

 この『学校一の美少女』である私に変なことするつもりじゃないでしょうね!?

 そう、エッチな本みたいに!」



 雫ってそう言うセリフをいったいどこで覚えてくるんだろう……?



「それは、大丈夫だから……。

 確かに僕にとっても『学校一の美少女』である雫がナンパされて僕以外の悪い虫がつくのは嫌だよ?

 だからこそ、僕が偽の彼氏になってそれを防ぐことができるのなら、雫に協力したいとは思うさ」


「そ、そう? なら!」


「――ただ、僕は言い方を変えてほしいだけなんだ」


「い、言い方を変える……ですって?」


「うん! ほら、物事を頼む時はちゃんとした言い方ってものがあると思うんだ。

 そして、決してそれは……


『私の彼氏(奴隷)になりなさい!』


 なんて命令口調では無いと僕は思うんだよ!」


「た、確かにそれはそうだけどぉ……

 因みに、歩は私にどんなお願いしてほしいのよ?」


「うーん、そうだね……。例えば――、



『私……歩のが……大好きなの! ほ、本当だもん!

 だって、歩と一緒にいるといつも落ち着くし……嬉しくて……全部、歩のおかげなの!

 だ、だから……

 この私を歩の彼女にして! 彼女にしてくれたら……

 う、嬉しいにゃん♪』



 ――と、まぁ……こんな感じかな?」


「……ななな、何なのよ! この頭がイカレタ告白!?

 歩……貴方、こんなふうに告白されて嬉しいわけ!?」


「もちろん♪」


「ふっざけんじゃないわよ!

 私はこんな恥ずかしい告白は絶対にしないからね!?

 だ、大体……いくら嘘の彼氏になってもらう『お願い』だからといって……

 この『学校一の美少女』である私が『大好き!』とか嘘でも言えるわけないでしょう!」


「フムフム……なら、雫『大好き!』って、言わなければいいのかな?」


「そ、それなら……って『嬉しいにゃん♪』とかも絶対に言わないわよ!」


「わかった……じゃあ、これならどうかな?」



 そして、雫の監修によりリテイクされたセリフがこれである。



「私……歩のことなんて……好きじゃないんだからね! ほ、本当だもん!

 だって、歩と一緒にいるといつも胸がドキドキしちゃうし……苦しくて……全部、歩の所為なんだから!

 だ、だから……

 この私を歩の彼女しなさい! 彼女にしてくれなきゃ……

 ゆ、許さないんだからね!?」


「じゃあ、そのまま続き言おうか~?

 セリフは『歩のバカバカ! 歩なんて嫌い! ほ、本当に大っ嫌いなんだからね!』で、ハイ!」


「ふぇ!? そ、そんなの聞いてな――」


「大声で!『歩のバカバカ! 歩なんて嫌い! ほ、本当に大っ嫌いなんだからね!』ハイ!」


「――ッ!? え、えーと……

 あ、歩のバカバカ! 歩なんて嫌い! ほ、本当に大っ嫌いなんだからね!」


「『歩が彼女にしてくれるまで許さないんだから!』ハイ!」


「あ、歩が彼女にしてくれるまで許さないんだから……」


「もっと、大声でぇえええええ!」


「あ、歩が彼女にしてくれるまで許さないんだから!」


「もっとぉおおおおおおおおお!」



「歩が彼女にしてくれるまで許さないんだからーっ!」



「『歩のバカバカ! 大好きー!』ハイ!」



「歩のバカバカ! 大しゅきぃーっ!」



「『私を歩の彼女にしてください! お願いします!』ハイ!」



「わ、私を歩の彼女にしてください! お願いします!」



「カァ――ット!!!

 雫、いいよ~! うん、雫にしかできない最高の『お願い』だったよ!」


「そ、そうかしら……?

 なんか途中から演技に力が入りすぎて自分でも何を言っているか分からなくなっちゃったけど……

 でも、これで歩は私の『告白』を受け入れてくれるのよね?」


「うん、もちろんだよ! むしろ、断るわけないじゃん」


「そう、ならよかったわ……」



「「……あれ?」」


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