第30話「頭隠して……」



「もう、歩なんか知らない! 私は怒ったわ!

 ええ、それはもう烈火のごとく! 疾風のごとく! 龍のごとく!

 天変地異が起きてもおかしくないくらいの勢いでプンプン!

 激おこ雫ちゃんムカ着火ファイヤーなくらいプンプンよ!」



 前回のあらすじ、雫ちゃんムカ着火ファイヤー! 以上。



「で、でも……歩がそんな私を見て――、


『本当にすみません!』とか『なんてことをしてしまったんだ!』とか『やっぱり雫は学校一の美少女で可愛いな!』


 とか思うのなら……? フフン!

 そ、そうね……?

 この私の機嫌が良くなるように、私を褒めて、甘やかして、煽てて、崇めるといいと思うわ!

 ま、まぁ……歩程度の人間がどんなことをしようとも……?

 この私は貴方を許すつもりはこれっぽっちも無いのだけどね!?」



 そう言うと雫は机の上にうつ伏せになったまま、僕を視界に入れないほど怒っているという意思を表せたかったのか……?


 鞄の中身を全て空にして、その鞄を頭からスッポリっと被ってしまった。



「えっと……雫?」


「何も聞こえないわ!」 プンプン!



 フム……そうか。



「雫のポンコツ……」


「貴方、本当にふざけんじゃないわよ!?」



 お、鞄から頭が出てきたぞ。



「聞こえているじゃん……」


「ッ!? な、何のことかしら……?」



 そう言うと、雫の頭は再び鞄の中に隠れてしまった。



「プンプンだ! もう、歩とは絶交なんだから、話しかけないよね!?」



 一体、雫は何処の天照大御神(あまてらすおおみかみ)なのかな?



「雫、僕が悪かったよ。だから、鞄から顔を出してくれないかな?

 誰も頭部を鞄にマミられた『学校一の美少女』なんか見たくないと思うんだよ? むしろ、この状態で誰かが図書室に来たら目の前に座っている僕にあらぬ疑いまでかけられそうなんだけど……?」



 いや、待てよ?


 今の状態なら……


 雫のスカートの中を覗いてもバレなくないか?



「プンプン! プーンだ! 私は大変怒っているの!

 歩とはもう口も聞きませんと言ったはずよ!

 でも、そうねぇ~? 歩がどぉーしても!

 どぉ~~しても、この私と口も聞けないのが泣くほど嫌だというのなら……」


「黒ォ!?」


「……ん? ちょっと、歩。何か言ったかしら?」


「ゴホン、ゴホン!

 い、いや……何も言ってないヨ?」


「そ、そう? おかしいわね……まぁ、いいわ!

 えーと、何を言ってたかしら……?

 そう! 歩がどぉーーしても『学校一の美少女』であるこの私に怒りを静めて欲しいと思うのなら、何か面白いことをしてくれないかしら?」


「面……『白い』こと……?」



 何言ってんだ? 白じゃなくて黒だったぞ?



 ……うん、やっぱり『黒』だ!


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