第24話「いただきます」
「さぁ、歩! 受け取りなさい!
私が作ったお弁当を残したりしたら、許さないんだからね!?」
今日も今日とていつもの昼休み、図書室に来た僕を迎えたのは雫のそんなセリフだった。
「……いつも美味しいお弁当をありがとうございます!」
雫が僕にお弁当を作ってくれるようになってから、しばらくして……
僕が『嫌いな食べ物』と偽って『好きな食べ物』を報告していたことが雫にバレてしまい。
僕は顔を真っ赤にした雫に――、
『つつつ、つまり、私は……歩が好きな食べ物を嫌いだと思い込んで……
ウフフ、どう料理したらあの舌がお子様以下の歩でも食べられるように美味しく作れるかしら?
とか、言いながら毎日、毎日、歩の大好きな食べ物で歩が喜びそうな美味しいお弁当を、それはまるで新婚の美人妻が愛する旦那様に愛妻弁当を作るかのように作って来ていたというの!?
……って、だだだ、誰が新婚よ!
何が愛妻弁当よ!
べ、別に……私は歩が嫌いな食べ物を我慢しながらでも食べる姿が見たくてお弁当を作って来てあげてただけなんだから……
か、勘違いしないでよね!?』
それはこっぴどく怒られた。
しかし、その嘘がバレたことにより、雫の自称愛妻弁当(仮)はもうなくなってしまうのかと思ったのだが……
『フン! こうなったら、もう歩の言うことは信用できないわ!
だから、明日からお弁当のメニューは私が歩の苦手そうな食べ物を予想して作って来てやるんだから!
ウフフ、歩!
私の完璧なる予想により、本当に嫌いな食べ物が入ってても、残さずちゃんと食べなさいよね?』
ということにより、雫の手作り弁当は継続となったのだ。
「ふ、フン!
別に、私の作ったお弁当が美味しいのは私が歩に美味しく食べて欲しいとか思っているわけじゃなくて……そう!
この私が『学校一の美少女シェフ』としても完璧するぎるだけで、手を抜いても誰もが絶賛するほどの料理の腕を隠しきれていないだけなんだからね!」
「あ、梅干が入っている!
雫、僕が好きな食べ物も入れてくれたんだ? ありがとうね」
「べ、別に! それは歩のために入れたんじゃなくて……
そう! 彩りよ!
お弁当の彩りを良くするために入れただけで、歩が好きだと言ったのを覚えていたわけじゃないんだから!」
でも、僕は知っている。
雫は強がって直ぐに人を突き放すようなことを言ってしまうけど……
かたくなに、僕が最初に『嫌い』だと発言した『ピーマン』だけはお弁当に入れてこないということを……。
さて、今日もこの世の全ての食材と母なる大地と……
あと、ついでに『学校一の美少女』にも感謝していただきます。
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