第22話「図書室は飲食禁止です」



「歩、よく来たわね!

 ちゃんと、言ったとおり何も食べてきてないでしょうね……?」



 今日も今日とていつもの放課後……ではなく、昼休み。


 図書室に来た僕を迎えたのは雫のそんなセリフだった。



「せっかく、この『学校一の美少女』である私が、歩なんかのためにわざわざ、早起きをしてエイコッササっとお弁当を作って来てあげたんだから!

 もし何かを食べたなんて言ったらゆるさにゃ――っ!

 ぴぃ~、舌を噛んじゃったわ……ハッ!

 ゆ、許さにゃいんだからね!!」



 そう、何故か今日はあの『学校一の(ポンコツ)美少女』の雫が何を血迷ったのか?


 僕にお弁当を作って来てくれたのだ!


 なので、僕はいつもの放課後ではなく、その前の昼休みにこの図書室に来たわけだが……。


「うん、言われたとおり学校に来てからは何も食べてないけど……何で待ち合わせが学生食堂じゃなくて図書室なの?

 ここって、本を読む場所で、お弁当を食べていい場所じゃないよね?」


「何よ。歩ってば、そんなことも分からないのかしら?

 まったく、ぼっちここに極まれりってやつね……。

 もう、そんなの決まっているじゃない!」


「決まっているって……?」



 僕がそう訪ねると、雫は表情を見られないようにするためか、やや赤くなった顔をそっぽ向けてこう答えた。



「だ、だって……学食で同じお弁当を食べてたら、カップルみたいに思われちゃうじゃない……」


「なるほど……」



 正直、少しだけ萌えた。


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