第21話「好き? 嫌い?」
「歩って好き嫌いはあるのかしら?」
今日も今日とていつもの放課後、図書室に来た僕を迎えたのは雫のそんなセリフだった。
「とりあえず……『巨乳』は好きだけど?」
「誰が性癖の話をしろって言ったのよ!? 歩のバカ! エロ、スケベ、変態!」
「とんだ言いがかりだ!?」
酷い! 雫が『好き』と『嫌い』を言えって言ったから正直に話したのに、まさか変態呼ばわりされるなんて……ありがとうございます!
「わ、私が聞いたのは! そ、その……えっちな方の質問じゃなくて……
あ、歩の好きな料理――じゃなくて、えっと……
た、食べ物の『好き嫌い』よ!」
「食べ物……? 食べ物なら『桃』とか『メロン』とか『プリン』とか――」
「えっと『桃』『メロン』に『プリン』って……歩、真剣に答えてるの?
なんか、ちょっと卑猥な気が……」
「またしても、失礼な!?
雫、今の僕があげた食べ物の何処に『卑猥』な要素があったのさ?
逆にこれを卑猥と思うのは、雫の方に問題があるんじゃないかと僕は思うんだけどなぁ~?」
「んな……っ! そ、そうね……
よく考えたら『桃』『メロン』に『プリン』なんて全然卑猥でもなんでもないわよね……?
いいわ、歩。続けなさい!」
「えーと、後は『巨峰』に『バナナ』と――」
「やっぱり、貴方! わざと言っているでしょう!?」
雫があまりにも『卑猥よ! 不潔だわ! この変態!』っと、罵倒して満足したので、僕は本当の方の『好き嫌い』をしゃべることにした。
「うーん、特にこれが好き! っていうのはないけど……
しいて言うなら『梅干』かなぁ?」
「え? う、梅干……?」
「うん、僕って好みが和食なんだよね。
だから、基本的にごはんは白いお米とお味噌汁、そして梅干!
あとなんか『お肉』?
これさえ、あれば何もいらないって感じかな?」
「和食っていうわりには肉食派なのね……」
「高校男子なんてみんなそんなもんじゃないのかな?
ほら、クラスの女子が野菜を食べれば痩せるって思っているのと一緒だよ」
「歩、その偏りすぎた偏見はは私以外の女子の前では絶対に言わない方がいいわよ……。
まぁ、歩みたいな『ぼっち』には言う女の子もいないでしょうけどね?」
「でも、雫。なんで急に僕の好き嫌いなんかを聞いてきたの?」
「そ、それは……」
「それは?」
何だろう。僕を毒殺でもするつもりなのかな?
「か、勘違いしないでよね!?
これは、昨日は歩に迷惑をかけちゃったから……
そのお詫びとして、歩にお弁当を作ってきてあげようと思って歩の『好き嫌い』を聞いただけなんだからね!
ど、どうせ作るなら……歩に『美味しい』って言って欲しいし……
それに、お弁当を作ってあげれば昼も一人じゃなくなる――、
なんて、理由じゃなくて! ただのお詫びなんだから!
そ、それ以外の他意は……ま、まったくもって――、
こ、これっぽっちもないんだからね!?」
なるほど、そういうことだったのか。
しかし、ここで僕が気になったのは『たったの一つ』だけだ……
「え、雫って料理作れるの!?」
「貴方、私をなんだと思っているのよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
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