第20話「パンツを守れ!」
「とんだ勘違いもいいところだわ!
この私が歩と同じ『ぼっち』なわけないじゃない!」
今日も今日とていつもの放課後、雫に『ぼっち』疑惑が浮上した。
「いや、でも……雫っていつも一人だし……」
「こ、これは違うのよ! 私はあえて一人になっているの!
そもそも、私みたいな『学校一の美少女』が『ぼっち』なんてことがあると思うの?
普通ならありえないでしょう!
なら、そこには何かしらの理由があるのよ!」
うん、ただ雫の性格に問題があるだけだと思うよ?
「つまり、その理由と言うのが『私は一人が好き』ということよ!
いい? そもそも、人が群れるのは『弱い』からなの!
なら、逆に考えて群れない人間はどうかしら……?
そう、群れない人間は『強い』のよ!
だから、この完璧である『学校一の美少女』の私が一人でいることは必然にして当然! だって、私は強いもの!
『えぇ~、ヤダぁ~! 一人じゃ寂しいのぉ~!』とか『誰かと話したーい! おしゃべりしたーい!』なんて人間強度ゼロみたいなやわい人間とは違うのよ!
そんな強い人間である私が『ぼっち』だと思う?
違うでしょ!
……つまりね?
私のような『お一人様』と歩みたいな本当の『ぼっち』とは同じだとしても、一人になる過程も理由も違うのよ!
そうね……。
歩にも分かりやすく説明するなら歩は『ぼっちになってしまった人間』だけど、私はあ・え・て!
『一人になりたくて、なった人間』ということよ!
そう! いうなれば私はオオカミよ!
私に愛や友情や仲間なんてものはいらないの!
そんなモノは既に中学生になる前に三大週刊少年雑誌に一つと共に捨ててきたわ!
欲しければくれてやるから探しなさい!
多分、この世の全てはそこにはないと思うけどね?」
三大少年週刊雑誌の一つ捨てきれてないじゃん!
多分、そのセリフからして……
未だに毎週読み続けてるよね? ねぇ?
「どう、歩! これで納得したかしら?」
「……分かったよ。雫がそこまで言うなら――、
僕はこの図書室から出て行くよ……」
そう言って、僕はドヤ顔をする雫の前から立ち去ろうとし――、
「ちょちょちょっと、待ちなさいな!
なな、何で歩がいなくなるのよ……?」
大慌てする雫にズボンをズリ下げられそうになるくらい引っ張られた。
「うん、雫。僕のズボンから手を放してくれないかな?
だって、雫は『一人になりたくて、なった人間』なんだよね?
だとしたら……今の僕の存在って雫にとって『邪魔』だよね?」
「ぴぇ……?」
「ゴメンね……。雫の気持ちに気付いてあげれなくて……
僕って、僕の存在って……雫にとって邪魔だったよね?
あと、ズボンを引っ張るの止めてくれるかな?
それ、パンツまで摑んでるからね?
だって、雫は『一人になりたい』だよね?
なら、僕はこの図書室からいなくなるよ……
もちろん、明日からも来ないし、今までどおり学校内でむやみに雫に話しかけないし、雫のために、例え雫から話しかけられても鉄の意志で無視を決め込むと心に誓うよ」
「ちょちょ、ちょっと……歩?
な、何を言っているの……かしら?」
「もちろん、僕だって雫を無視するのは心苦しいよ?
でも、これも雫のためだから!
雫が『一人になりたい』っていうのなら……
僕は心を鬼にしてそれを手伝うよ!
あと……
いい加減に僕のパンツとズボンから手をはなせぇえ!」
「だ、だって、だって……っ!
そんなことしたら、誰が私の話を聞いてくれるのよぉおーッ!
ヤダぁ! ヤダぁ~!
一人じゃ寂しいのよぉ~!
わ、私だって……誰かと話したいの!
おしゃべりしたいのよぉおおおおおおお!」
「分かった! 分かったから……っ!
とにかく僕のズボンから手をはなせぇええええええええええええええ!」
この後、十分くらいの死闘の末に――、
なんとかパンツは死守することができました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます