第13話 相談

「美味しかったですね!カレー」

「うん、そうだね」


買い物から帰ったら日が暮れていて、2人でカレーを作って食べた。


「シーフードがいい感じだったね」

「ですね。……あの」

「ん?どうしたの?」

「なんか会社でありましたか?」


ひなたに言われて、はっとする。俺はそんなに顔に出るタイプだったのか。


「顔に出てた?」

「はい、いつもより暗いです……あの、良ければ聞きましょうか?」


一瞬躊躇ってしまう。

これを話したら、ひなたはどんな顔をするだろうか。

これをきっかけに、亀裂が入らないかとか、冷たくされたいしないだろうかとか、いくつも悪い考えが浮かぶ。

でもきっと隠したままにするのはもっと酷いことだと思ったから。


「うん……うん、じゃあおねがいしようかな」

「はい、じゃあ何があったんですか?」


ひなたと俺が後輩の社員に知られてそのときから避けられていること、泣かれたこと。全部ありのままに伝えた。

一通り話を聞き終わると、彼女は複雑そうな顔をしていて。


「そうですか……やっぱりあれですかね、大輔さんのことを、好きだったとか……」

「そうなのかな……」


話してから、やっぱりこれはひなたに話すべきじゃなかったと後悔しながら話を続けていた。


「いや、多分ないよ、なんか他に……」

「いや。多分好きですよ、その子」


無理やり遮って、強めに言うひなた。


「明日とか週末とかに、その人とちゃんと話した方がいいですよ!家に行くとか」

「ええ……そこまでするの?」

「当たり前です!向き合ってあげてください!」


ひなたの圧に押されて、無理やり首を縦に振る俺。

なぜ、彼女はここまで真正面から向き合ってくれるのだろうか。


「わかったよ……でもさ」

「なんですか?」

「複雑じゃないの?……その、その子が俺の事好きだとしたら」

「複雑ですけど……仕方がないです。その子と話せなくなるのは困りますよね?」

「うん……まぁね」

「だったら私には構わないで、行ってあげてください、それがその子のためでもあるし、大輔さんのためでもあるから」


圧を緩めて、にっこりと微笑むひなた

心の中で、あぁ、すごい人だと思う。

きっとひなたは心では否定して、きっと好きじゃないから話す必要は無いと言いたいだろうに。

彼女は俺の思ったよりも大人なのかもしれない。


「ありがとう、ひなた。明日から頑張って話しかけて見るよ」

「はい!頑張ってください」


榊原に向き合おうと、そう決めた。

その日は、俺の部屋に戻って寝た。

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