第23話妖狸町中華1
「女将さん。
朝定食とラーメンをセットで四つください」
「あいよ!」
今日も来てしまった。
毎日三食同じ中華屋さんで食べるなど、他人が聞いたら笑うだろう。
だが居心地がいいのだ。
美味しいのだ。
他では得られないモノがあるのだ。
毎日来るお客さんの事を考え、定食の内容を考えてくれている。
栄養のバランスを考え、野菜を消火吸収がいい炒め物にしてくれている。
三食ここで定食を食べたら、過不足なくビタミンを摂取できる。
しかもとても美味しいのだから言う事ない。
ありがたい話だ。
「「いらっしゃいませ」」
光男君と花子ちゃんがうれしそうに水を持ってきてくれる。
店の御手伝いができるのがとてもうれしいようだ。
まあ、大将と女将さんも考えていて、変な客に接客させたりしない。
子供が好きで、少々の失敗を笑って許してくれる常連客だけに接客させている。
店としたら、接客させる方が手間がかかるのだが、子供達がうれしそうにしているから、社会見学も兼ねてやらせてあげている。
「今日も来ているようだが、大丈夫か?」
腐れマス塵が、お母さんが始めた小規模住居型児童養育事業を叩いている。
養育費と里親手当をもらいながら、敦史君達を働かせていると言うのだ。
確かに働かせているが、子供達が望んだからだ。
まあ、これを認めたら、小規模住居型児童養育事業で集めた子供を働かせていいという前例を作ってしまうことになる。
それが児童強制労働の道を作ってしまうと言われれば確かにそうだ。
だが、もう少し柔軟な運営をして欲しい。
特にお母さんと親父さんが、子供達のためにどれほど身銭を切ったかを考えれば、高校生に過酷な日程で野球をさせてぼろ儲けしているマス塵の癖に、何を言っているのだと怒りを感じるほどだ。
「好きにさせればいい。
俺はお天道様に恥じるような事は一切していねぇ。
誰が何と言おうと、子供達にやりたいことをさせてやる」
大将は歳を感じさせない張りのある声で啖呵を切った。
何とも頼もしい。
だが腐れマス塵は汚い。
客に偽装して全てを聞いて真実を知っているにもかかわらず、金になるように、子供達を虐待しているという嘘の記事を平気で書くのだ。
「大将。
色々な所に貸しがあるから、何なら腐れ記事を書いたり、嘘を報道したマス塵を潰そうか?」
「ありがとうよ。
だがそんな事をしたら、矛先が王子の方に向いてしまうよ。
それに俺にも長年培った縁がある。
縁のある人達が助けてくれるさ」
ふむ。
確かに大将や女将さんの地縁血縁は強力だった。
ひとまず様子を見ようか。
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