第13話誘拐13

「親父さん、お母さん。

 費用の方は俺が負担するから、小規模住居型児童養育事業を開いて、子供達の事を頼めないかな?」


 俺はお母さんと親父さんに全ての事情を話し、子供達の保護を頼んだ。

 

「任せなさい。

 王子にだけ負担はかけないよ。

 最初にお金を負担すると言ったのは私だよ。

 小規模住居型児童養育事業て言うのは分からないけど、借金してもでも助けるよ」


「おうよ!

 俺も男だ。

 手を貸すとも言ったし、金も出すとも言った。

 約束を違えたりはせん!」


 本当に気持ちのいい夫婦だ。

 真直ぐな気性で気風がいい。

 大きな借金を抱えるかもしれないというのに、迷うことなく子供を助けようとする。


 それからは具体的な話し合いをした。

 お母さんと親父さん所は大家族で、中華屋も三交代で営業している。

 早朝は先代の大将と女将さんが朝ラーメンと朝定食を基本に営業している。

 昼前後はお母さんと親父さんが営業し、夕方から夜にかけては孫夫婦が若と若嫁と呼ばれて営業している。


 孫は他に四人いて、まだ実家暮らしだから、彼らを中心に小規模住居型児童養育事業を開業できるそうだ。

 問題は手続きと許可だが、これもお母さんと親父さんが昔からの縁故を使って働きかけてくれるそうだ。


 親父さんもそうだが、代々この地に根を張って生きてきた先代の大将は、色々な所に顔が利くそうだ。

 市会議員はもちろん、市長にも直に話ができると言う。

 市役所の職員にも根回しができると言っていた。


 それに教団と政党の悪事の証拠がある。

 国会では政党は与党第二党で、与党第一党の議員も教団の票を当てにしている。

 だが市会議員は違う。

 完全に敵対している。

 だから市議会で悪事の追及ができるだろう。


 市役所内に蔓延る教団員は多いが、それをよしとしない職員もいる。

 そんな人間を先代と親父さんは集めて、悪事の証拠を集めてくれるそうだ。

 お母さんや女将さんが、女性会を通じて票も固めてくれるそうだ。

 そして虐待を助長した人間には投票しないと決意表明してくれるそうだ。

 いざという時のための、市会議員立候補者も立てると言っている。


 そこまでやれば、落選を恐れる市会議員は全員反教団になってくれるだろう。

 ここまでくれば、本国の圧力も金も不要だと思う。

 だがもう母に相談した後だ。

 強烈な圧力を日本政府にかけてくるだろう。

 言っていたように、国連でのロビー活動も熾烈なモノになるだろう。


 だから虐待の方は大丈夫だが、問題は幸次君の誘拐事件だ。

 誘拐されるはずだった子供の親が立て替えてくれると言うが、本当かどうかわからない。

 万が一の時を考えて、5億円の現金を用意して、その家に行ってみよう。


 

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