第12話誘拐12

 色々と思案しているうちに、大使館から応援が来てくれた。

 光男と花子が入院している部屋は、今は別々になっている。

 救急搬送だったから、仕方がない事だ。

 だが、鬼親から守るためには、同じ部屋が望ましい。

 そこで別料金を払う事を条件に、二人部屋を開けてもらう事にした。


 病院の先生の看護婦も人の子だ。

 中には悪人もいるが、基本的には善人の方が多い。

 病院経営の負担にならない限りは、色々と融通してくれる。

 それに子供達は生活保護家庭だ。

 福祉事務所で手続きをして、医療券をもらえば、医療費は無料だ。


 二人部屋の差額に関しては、俺が支払うと言ってある。

 普通は色々と手続きや問題があるのだろう。

 だが子供達の打撲痕と火傷痕を見た先生と看護婦が、事務と掛け合ってくれた。

 だから何の心配もいらない。


 心配があるとすれば、鬼親・教団・政党の口封じだ。

 だが証拠映像があるから、教団と政党は動かない可能性が高い。

 問題は鬼親だ。

 狂人には常識もなければ、損得計算もできない。

 襲撃を警戒するなら、二人の部屋に別々の護衛を置く必要がある。


「弁慶。

 剣鬼と剛龍をここに残して、俺達二人でお母さんの所に行くと言うのは駄目なんだよな」


「当然です。

 王子の護衛は我々三人の任務です」


「だが誰か一人は残らないと、敦史君が不安に思うぞ」


 気丈に振る舞っているとは言え、光男と花子は入院し、幸次は誘拐されたのだ。

 内心は不安で圧し潰されそうだろう。

 光男と花子を助け出した俺達ならば、少しは安心感もあるだろうが、いきなり現れた俺の仲間と言うだけの男では、不安で仕方がないはずだ。


「仕方ありませんな。

 剣鬼を残しましょう。

 接近戦なら剣鬼が一番です。

 剣鬼の代わりに、応援の一人を護衛に付けましょう」


 今回大使館から応援に来てくれたのは防衛駐在官だ。

 大使館職員でも特に戦闘力のある者だ。

 ちなみに俺は特命全権公使を拝命している。

 特命全権大使では仕事が忙し過ぎて、自由に何もできないから、名目だけの特命全権公使にしてもらった。


 まあ、俺の他にも特命全権公使がいて、公務は全て行ってくれている。

 俺が日本に行きたいと言ったから、護衛のための職員が大増員されている。

 特に防衛駐在官が大増員されている。

 弁慶達も防衛駐在官だ。


「敦史君。

 直ぐに戻って来るが、その間は剣鬼に相談すればいい。

 他の三人も信頼できる。

 今後の事を、中華屋のお母さんと親父さんと相談してくる」


「うん。

 光男と花子を助けてくれて、ありがとうございます。

 でも、幸次の事も心配なんです。

 幸次も助けてやってください。

 御願いします」

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