第4話誘拐4
「王子。
ここで先に通報しましょう。
事情を説明しておかないと、現場で混乱します。
現場に行く警察官には、何もかも知った上で対処してもらうべきです」
参謀格の剛龍がアドバイスしてくれるが、そう言う訳にはいかない。
「確かにその通りだが、光男と花子が心配だ。
俺達が一秒遅れる事で、二人が殺される可能性もある」
「分かりました。
では家に向かいながら警察に通報しましょう」
弁慶が直ぐに携帯を手にして警察に連絡してくれる。
「おじさん。
家に案内するから、早く助けて」
光男と花子が殺されると言ったのが心配なのだろう。
敦史が真っ青になって先を急がす。
俺も心配だ。
虐待死した子供の遺体など、絶対に見たくない。
俺達はダイムラーベンツのウニモグに乗り込んだ。
UR-416装甲兵員輸送車タイプの武装を撤去したモノだ。
全長 :五・二一メートル
全幅 :二・二メートル
全高 :二・二メートル
重量 :七・六トン
乗員数:二名+兵員一二名
元が装甲車だから、圧倒的なパワーを持っているが、日本の道路で全力を発揮するわけにはいかない。
まして今は子供を乗せている。
家まで確実に案内してもらえばいい。
その間に弁慶が警察に通報してくれている。
誘拐事件は当然だが、敦史の家庭の事情もだ。
そして俺達が探偵社である事も、地元の中華店が事情を知っている事もだ。
今の警察は世論を恐れている。
いや、マス塵の政府叩きを恐れている。
誘拐事件の解決はもちろん、児童虐待を知って何もしなかったとあっては、マス塵の餌食になるのは必定だ。
さて問題は敦史の実母と義父だ。
義父と言うのが籍を入れているかどうか分からない。
内縁の夫や恋人と言う可能性がある。
問題はどうやった保護するかだ。
人身売買の抜け道にならないように、この国の養子縁組は厳しい。
「佐藤さん。
敦史君を連れてきました。
佐藤さん。
ここを開けてください」
「……」
居留守ですか。
どうやら幸次と言う子を見殺しにするようだ。
だがこれで一安心だ。
もし自分達で幸次を殺して誘拐事件をでっちあげていたら、俺達に会うはずだ。
いや、だが、逆上して光男と花子を殺してしまっている可能性もあるか?
狂人の行動は常識では測れない。
先に誘拐事件をでっちあげたのに、脈絡もなく更に虐待しているかもしれない。
これは無理にでも二人の生死を確認する必要があるな。
「佐藤さん。
私達は探偵社の者です。
実は児童虐待調査の依頼がありまして、敦史君を身体検査をしたんですが、暴行した跡があるんですよ。
ここを開けて頂けないと、このまま警察に連れて行って、暴行罪の告発を致しますが、それでいいんですね!」
さてどうでる?
敦史君だけの安全を考えれば、黙って証拠を集めるのが確実だが、それでは光男と花子がその前に死んでしまう可能性もある。
何としてでもこのドアを開けさせる!
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