第5話誘拐5

「ちょっと!

 何を根も葉もない事を言っているんですか!

 証拠もないのにいい加減な事を言うと、教団を通じて訴えますよ!」


 何と醜い人相の女だ!

 単純な顔形だけなら、美人なのだろうが。

 だが眉間に寄った皺や、つり上がった目尻は夜叉のようだ。

 眼に込められた性根は狂気を感じさせる。


「根も葉もない事など言っていませんよ。

 ほらこの通り。

 服の上からは見えないところに、無数の傷跡がありますよね。

 これをどう説明するんですか?

 教団はこれを知って黙認しているんですか?

 だとしたら、教団ごと訴えますよ。

 今迄教師や警察は、教団と政党の力で黙らす事ができたでしょうが、ここまで証拠が白日の下にさらされたら、教団が貴方方を処分するんじゃありませんか?」


 真っ青になったな。

 正確な情勢判断ができるのだから、狂人ではなくて、快楽のために実の子を虐待していたな。


 教団と教団の票数で成立している政党も、生活保護費から会費を徴収しているし、選挙の時に票を確保している。

 こいつらの言うがまま役所に圧力をかけたのだろう。

 腐ってやがる!


「それは……

 その子が勝手に転んだのよ……」


「じゃあこの煙草を押し付けた火傷の跡はどう説明するんです。

 このような傷が、転んでできるなどと言う戯言は通用しませんよ。

 さっさとここを開けて、光男君と花子ちゃんの無事を確認させなさい。

 さもないと、マスコミと教団に通報しますよ。

 教団と政党は、貴男方を事故死に見せかけて殺すんじゃないですか⁉」


 教団と政党からコマーシャル料と言う賄賂をもらっているマス塵は、教団と政党が虐待隠蔽に関与していたことを報道しないだろう。

 だが今のSNS社会では、マス塵だけを抑えれば済む問題ではない。

 証拠や証言を根こそぎ隠蔽する必要がある。

 そうなれば、この女と情夫は確実に消される。


 俺も普通だったら事故死に見せかけて殺されるだろう。

 だが俺には母国の力がある。

 教団も政党も強引な手には出られない。

 賄賂を贈ろうとしても、少々の金額で黙らせられる相手ではない事は、教団幹部もも政党幹部も理解するだろう。


「佐藤さん。

 全てこのように映像にとって記録しているんですよ。

 今更どうにもなりませんよ。

 早く光男君と花子ちゃんの無事を確認させてください。

 どの上で逃げたらどうです。

 そうしないと教団と政党に殺されるのは分かっているでしょう?」


「煩いわね。

 二人とも生きているわよ。

 さっさと確認すればいいじゃない!」


 生きているだと?

 無事とは言わないのか?

 生きているだけで、意識不明の植物人間状態だとでも言うのか?!

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