第2話
我ながら会心の一撃を喰らわせられた気がする。
これまでの人生に
初めて告白されたのは2年前の中学2年の時で、パニック状態になった僕の様子を廊下から同グループの女子達にスマートフォンで撮影された。
ネットには流されなかったようだが、クラスのグループラインには共有された。ちなみにこのグループラインに僕は招待されていない。
2度目の告白は中3の1学期で、授業中に回ってきたルーズリーフの切れ端に、放課後に会って欲しい、という旨の内容が記されており、末尾にクラスメイトの女子の名が書かれていた。
半信半疑だったが、万が一の奇跡を信じて指定された校舎裏に行くと、メモを回してきた女子がすでに待っていた。心臓をバクバクさせながら彼女に近寄ると、仕掛けられていた落とし穴に落ちた。
その様子はネットにアップされて、そこそこの再生回数を稼いだらしい。
そこから僕は女子との断絶を決意した。
今後は女子からの呼び出しには絶対に応じない。そう決意した途端、その手の嫌がらせはパッタリなくなり、そのまま中学を卒業した。
高校に入ってからも女子とは関わらない平穏な日々が続いた。7月に入り、もう中学の時のような嫌がらせはないんだなと安心していた。
今日の朝までは―――
いつも通り1人で登校していると「小野塚くん」と背後から声をかけられた。振り向くと我が校のトップヒエラルキー、月崎さんが目の前にいた。
彼女は僕と違うクラスで、もちろん話したことはない。意味が分からずポカンとしていると
「突然ごめんなさい。1年B組の月崎といいます。小野塚くんに話があるんですけど、今日の放課後って空いてますか?」
「え?あ、空いてますけど・・・」
それじゃあ、と月崎さんが言葉を続けた。
「3階の多目的室に来てください」
「・・・はい」と思わず返事をすると彼女はさっさと校舎に走っていった。20秒ほどの出来事だった。
その日の授業は、朝の出来事のせいで何も頭に入らなかった。
入学式の時から月崎さんの美貌は噂になっていた。後日、同じクラスになった男子の話によると、彼女はその美貌を鼻にかけることもなく、誰とでも分け隔てなく会話をしてよく笑う人らしい。もはやただの女神だ。
そんな女神に突然呼び出されれば、いろんな期待をして舞い上がってしまうだろう。
しかし幸か不幸か、このような出来事を僕は既に経験している。
そして待ち合わせ場所に行ったらどうなるかも、当然わかっている。
しかしへこんでいた気持ちも昼休みを過ぎた頃には一周まわって強気なものに変化していた。
万が一告白されたらどうするべきか。
どうせなら、誘いに乗ったふりをして、逆にガッツリ振ってやろう。懐に潜り込んでからのカウンターパンチだ。
どんなセリフで断ってやるのがいいか、考えた。
ごめん、他に好きな人がいる。
ごめん、タイプじゃない。
今は恋愛に興味はない。
いろいろと考えたが、どれも上から目線の言い方になってしまい、下手したら首謀者連中の怒りを買いかねない。
相手の予想を斜め上に超えつつ、かつ僕自身をも卑下するウィットに富んだ返しとは何か。
自分なりに考え出した答えが、月崎さんに
敢えて純潔と表現したのも、そのほうがスタイリッシュだと思ったからだ。結局そのあと説明を求められて童貞と答えたけど。
予想以上に彼女は唖然とした表情になり
「そう、なんだ・・・」と呟いたきり固まった。
きっと僕が断るとは夢にも思わなかったのだろう。
彼女を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます