ブーメランからの恩返し
3-1
あの劇的かつ不愉快な夢を見てから一週間がたった。
この一週間夢を見たからといって道子の日常が変化したかというと、そんなことはない。
夢から覚めても、道子がどんなにあり得ない夢を見ていたとしてもそれに興味を持つものは誰一人としていない。
命をかけた夢から覚めた後も、道子は誰とも会話をすることなく一日を終え自室に戻る。
そして同室の別の女子達の会話に耳を傾けることもなく静かに眠りにつこうとする。
寝られるわけがない。
部屋の中にはしゃべり声という騒音が鳴り響き、頭の中ではいろんな思考が駆け巡る。
夢の中では、あの猟師には何の抵抗もなくしゃべることができたのに……。
結局夢は所詮夢の中でしかない。
夢の中でうまくいったことが、現実でもうまくいくなんて到底あり得ないのだ。
夢から覚めないほうがいいのかもしれない。
そんな考えすら道子の頭の中をよぎっていた。
「それでさ、琢磨君がねこういったの」
「なになに?」
「この俺がロバだ! っていったの!」
「なにそれー、意味わかんなーい」
部屋が道子以外の笑い声で満たされる。
本当に意味が分からない。
どうしてそんな意味の分からないことで、意味もなくゲラゲラと笑えるのか本当に理解できない。
ああ、うっとうしい。もう早く眠ってしまおう。
道子は眉を寄せながらゆっくりと目を閉じ、やがて深い眠りに誘われた。
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