二:落第剣士と剣術学院 2
予想外に早くグラン剣術学院へ到着した俺は、食堂でいつもの『格安のり弁当』を食べて時間を
そこで俺は──
「な、なんだよ……これ……!?」
早朝だというのに、体育館には
「うわっ、落第剣士様の登場だぞ!」
「やっといなくなるのね! 毎日馬鹿みたいに剣を
「ドドリエルには感謝しないとな! 学院の
同級生から、耳を
「ど、どうして……!?」
そんな風に俺が
声のする方を見れば──体育館の中央にドドリエルとその取り巻きがいた。
「あはっ! 逃げずに出てきたことだけは
「ど、ドドリエル! なんだよ、これ……! こんなの聞いてないぞ!?」
体育館に詰めかけた生徒を指差して、そう問い詰めた。
「いやぁ、僕もびっくりしてるんだよ……。どこかから僕とアレンが決闘するという情報が
ドドリエルはそう言って、わざとらしく
「お、お前……っ」
「落第剣士をぶっ飛ばせー!」
「きゃーっ! ドドリエル様ぁ!
ドドリエルの勝利と、俺の無様な敗北を望む生徒たちの声が飛び
「えー、それでは……。
どうやら、この
(中立であるはずの学院側が、この状況になんの口出しもしないということは……)
学院側も、俺を追い出したがっているということだ。
(くそ……っ)
「ゴホン。両者、準備はよろしいですね? それでは──始め!」
そうしてこれ以上ないほどひどい環境の中、
「一瞬では終わらせないよ、アレン? ジワジワと痛ぶってやる……お前が泣いて許しを
ドドリエルは
「……
それに応じて俺も剣を抜き、へその前に置く。剣術における基本中の基本の型──
ピンと張りつめた空気が
そんな中、俺はチラリと奴の剣に視線を落とした。刀身にある美しい
一方、俺の剣は一振り千ゴルド──どこにでも売ってある最低ランクの一振り。
(多分……いや確実に、俺はこの勝負に負けるだろう)
剣・技量・才能──どれを取ってもドドリエルに
(だけど、ここで退くわけにはいかない……っ)
こんな俺にだって、剣士としての──男としての
(母さんを馬鹿にされて、おめおめと引き下がれるもんか……っ)
心の中で
あいつの剣は
(
あの天才だって人間だ。失敗もすればミスだってする。
(だから、この戦いはただひたすらに奴の
激しい
勝つことはできなくとも、最低でも手傷は負わせる──それが俺の戦略だった。
(さぁ、こい……!)
俺は精神を集中させ、ドドリエルの
だけど、俺の予想に反して奴は一向に攻めてこなかった。
それどころか一定以上の
(……何だ? いったい何を
ドドリエルの『らしくない行動』を
「アレン……っ。お前、何をした……!?」
奴は先ほどまでの不敵な笑みを引っ込めて、厳しい形相でこちらを睨み付けた。
「……何を言っているんだ? 質問の意味がわからないぞ?」
「とぼけるつもりか、落第剣士の分際で……っ!」
ドドリエルは
(……あいつの気はそう長くない)
ドドリエルが俺のことをよく知っているように、俺もあいつのことをよく知っている。
短気で
そうして一分、二分と時間が経過したそのとき──
(……来る!)
そして次の瞬間、
「うぅおおおおおおおお!」
「……っ」
その凄まじい気迫に
(……え?)
いつまで
いや、もっと正確に言うならば……。あいつはまるで子どもがチャンバラごっこをやるときのような──わざとらしくゆっくりな動きでこちらへ向かっていた。
(あいつ、何を考えているんだ……?)
その疑問は、すぐに解消された。
(なるほど、そうか……。俺なんかとは、
「お前には本気を出す価値すらない」──ドドリエルは言外にそう言っているのだ。
ただただ悔しかった。まさかここまで
せめて
(
強く
「
まるで「
(こんなの……わざわざ受け流す必要もない)
「なっ!?」
突きを
「あ、アレン……? ぼ、僕の剣を全て
「……は?」
「でも、今ので僕の体もようやく温まってきたよ。次の一撃は、今の三倍は速い! さっきのようなラッキーはもう二度と起こらないぞ……!」
「いや、お前は何を言って──」
俺が疑問を口にしたそのとき。
「時雨流奥義──
ドドリエルは
さっきのような連撃ではなく、一点集中型の突きだ。しかし、
(少し速くなった……のか?)
その一撃は、
それに何より気になったのは──突きを放っているあいつが、あまりにも隙だらけだったことだ。これではまるで、「斬りかかってこい」と
(くそ、どこまでも人を
「この……
そうして
「なに!? か、はぁ……っ!?」
全ての斬撃をその身に浴びた
「……は?」
予想外の展開に、俺は思わず
「ど、ドドリエル=バートン、
このとき俺は確信した。
(夢じゃ、ない……!?)
時の世界で過ごした十数億年は、決して夢や
(ドドリエルの動きが異様に
実際は、俺がドドリエルよりも
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます