第15話一息の七福神『終章』
その後岩岡は市役所に行って、「あの丘を買い取る!」と大声で宣言し、仏像の全ての残金を役員に見せつけた。ちなみにスーパー側の買い取り額は七百万円なので、雲泥の差の支払い額となり結果的に、あの丘は岩岡の資産となった。ただ市役所側は「そんな大金受け取ったら、世間体が悪くなる。」ということで、結局二千百万しか受け取らなかった。その後岩岡は丘をもっと住人が来るように整備し、それでも残った残金は東日本大震災募金・赤い羽根共同募金・ユニセフ募金に送り、これで七福神からの借金はゼロになった。
「やっと借金が無くなった・・・、ここまでくるのに随分と苦労したが、その分多くの人と出会って幸せにしてきたなあ・・・。」
岩岡は丘にある管理小屋から景色を眺めていた、丘の所有者となった岩岡は毎日ここに来ては丘の管理をしている。ちなみに家は恵と文香の新居になっており、近いうちに恵と再婚する予定だ。
「ほほほ、よくがんばったのお、岩岡よ。」
「あっ、大黒天様!それに皆様がたも!」
大黒天・毘沙門天・弁財天・寿老人・布袋・福禄寿・恵比寿が、狭い岩岡の管理人室に集合した。
「岩岡、そなたを選んでよかった。」
「えっ、どういうことですか?」
「我々は幸福を通して、人情の温かさを思い出させようと多くの人間に、金を貸しまわっている。じゃが大概は大金に心を飲まれてしまい、金を力にして欲望のままに生きてしまう。渡す前は感心させる者もいたが、金を貸し付けたとたん手の平を返すように悪人になってしまった者を、これまで何人も見てきた。」
「確かに、お金の力には凄まじいものを感じます。」
「しかしそなたはお金の力に負けることなく、我らとの約束を果たして見せた。これまで我らとの約束を最後まで守ったのは、岩岡が初めてだ。」
「そうだったんですか、これはなんという光栄、ありがとうございます。」
「岩岡よ、そなたの誠実さと温かさの境地、決して忘れるな。」
「はい、生涯胸に刻んで生きます。」
「そうか、それでは最後の時まで良い余生をな・・・。」
そう言い残して七福神は消えてしまった、岩岡は管理人室を出て空を見上げた。
「七福神・・・、子供のころから信じていた神にこんな幸福をもらった、これから生まれてくる孫のも、七福神について教えたい・・・。」
岩岡はそう思いながら、お昼の空に昇る太陽に手を合わせた。彼の人生はどうなるかは誰にもわからないが、いつまでも彼の心が幸福で満たされるのは確かなことだ。
七福神から、借金しました。 読天文之 @AMAGATA
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます