第4話 イースター

 あるイースターの日でした。

「・・・何、これ。いろはさん、もしかして泥棒あたりに入られました?」

たーくんが会議を終えて帰ってきた部屋は、まるで泥棒でも入ったかのようにぐしゃぐしゃになっていました。そんな部屋の真ん中に陣取るのは、満足そうに笑ういろはちゃん。

「違います。実は、今日はイースターなので部屋に隠したのです。」

「・・・いろはさん、卵はだめだよ。卵は、この時代に隠しちゃダメだよ。」

がっくりと頭を抱えて座り込むたーくんをみつめ、いろはちゃんはくりくりと目を丸くしました。それから、お父さん譲りの凛々しい表情で

「何を言っているんですか、いくら私でもそれくらいはわかっています。だから、卵の代わりにこの部屋に隠したのです。」

「・・なにを?」

遠まわしな言い方に、たーくんは不思議そうにいろはちゃんを見つめました。いろはちゃんといえば、いつものきっぱりとした物言いはどこへやら、もごもごと口を動かしながら

「それは、ですね、見つけていただければわかるといいますか、その・・あの、」

「いろはさん?」

次第に赤くなっていくいろはちゃんをたーくんは心配そうに覗き込みます。

「・・・こ、恋文です!では、私はこれで!!」

ぱくっと大きく口を開けてそれだけを早口で言うと、いろはちゃんは目にも留まらない速さで部屋を出て行ってしまいました。

「こいぶみ、」

まるで泥棒が入ったように荒らされた部屋に一人残されたたーくんは、何としてでも見つけ出そうと腕をまくりました。

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