第32話 逃げ道

 目を開くと教授とサーシャと慧が心配そうにあたしの顔を覗き込んでいる。

 あたしはカバっと跳ね起きた。

 《リゲタネル》の仮眠室のベッドの上だった。

「あたしはどれだけ寝てたの!?」

「落ち着いて。寝ていたのは十分だけよ」

「はい、水」

 慧の差し出したコップをあたしは受け取る。

 冷たい水かあたしの喉を潤した。

「ありがとう。慧」

「少しは落ち着いたかしら?」

「ええ。でも、あんなに取り乱しちゃって、あたし船長失格だわ」

 サーシャは呆れたような顔をあたしに向けた。

「馬鹿ね。そんな事誰だってあるわよ。だいたいあんた真面目すぎるのよね」

「真面目? あたしが」

「そうそう。たまには爆発するのもいいじゃない」

 よくないよ。恥ずかしい。

「それより、状況は?」

 教授は底意地の悪そうな笑みを浮かべた。

「心配するな船長。マーフィの奴、必死になってワシらを探しておる。まったく見当違いなところをな」

 でも、このワームホールが見付かるのは時間の問題だろうな。

 このままワームホールを閉じたら、あの惑星はどうなるだろう?

 CFCに蹂躙されて、あの惑星の猫達は殺されてしまうの?

 あたしは枕元にある小箱を開いた。

 中にはトロトン・ナツメがくれた宝玉。

 調べたら桃色水晶だった。そんな高価なものではないが、この宝玉には猫達の切実な思いが込められている。

 ごめん、ナツメ。あたしにはあなた達を助けに行けない。

「ところでなあ船長」

「え? なんですか」

「ワームホールを閉じる前に、もう少しプローブのデータを集めておきたいのだがよいか?」

「プローブのデータ? どの?」

「内惑星と外惑星に送ったやつじゃよ」

 外惑星!

「教授! ちょっと、さっきのデータ見せてください」

「さっきのとは?」

「プローブの認識ビーコンの出てたという惑星です」

「ああ、あれか」

 さっきあの写真を見たとき、あたしの心に引っ掛かるものがあった。

 あたしはFMDを装着して惑星の写真をもう一度見る。

 まさか!?

 今度はプローブの認識ビーコンのパターンを、あたしの持っているデータと照合する。

 こんな事って!!

「どうしたんじゃ? 船長」

 見つけた! 逃げ道を……

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