第12話 父の姿
「重い!!」
酔いつぶれたサーシャの身体を担いで、あたしは店を出た。
それにしても、ビール大ジョッキたったの四杯で酔いつぶれるとは……
その程度だったら、大和撫子のあたしですらなんともないというのに……
ようやくの事で、サーシャをロシア基地に送り届けたあたしは、酔い覚ましもかねて少し町の中を散策していた。
この時間になると、町はすっかり眠りにつき大道芸人もストリートミュージシャンも姿を消している。
通行人もまばらだ。
あたしは、空を見上げた。
両側から迫ってくるような断崖絶壁の間に、狭い星空が見える。狭いけど、大気で遮られただけの星空が見れるというのは小惑星ではかなり贅沢なことだ。
この星空は永遠に昼になることはない。
大気の熱的散逸を防ぐために《楼蘭》では人工太陽は作らないことなったのだ。
断崖の途中から大きな照明が地表を照らしているが、その明るさは到底昼の明るさには及ばない。
せいぜい月明かりといったところだろう。
首が痛くなってきて視線を下に戻した。
「え?」
二十メートル離れた交差点の向こうにあの人がいた。
なんで?
その前を大きな清掃ロボットが横切る。
ロボットが通り過ぎた後、人の姿は無かった。
今のは、いったい?
あたしは交差点まで走る。
左右を見回すが人の姿は無い。
しかし、あたしは確かに見た。
十六年前にカペラに取り残されたはずの父の姿を……
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