第13話 射撃テスト

 ディスプレイに岩の塊が映っている。大きさは直径十メートルほど。

 ディスプレイ上を彷徨っていた白いレティクルが岩塊にピタっと停止した。レティクルの色が白から赤に変化。

 同時にロックオンの文字が表示される。

 あたしはトリガーボタンを押した。

 岩塊の一点が白熱して蒸気を噴出する。

 その反動で岩塊は加速され遠ざかっていった。

「どうじゃサーシャさん。百メガワットの自由電子レーザー砲じゃ」

 教授が遠ざかっていく岩塊を指差す。

 ここは《楼蘭》にあるワームホールの一つを通った先にある白鳥座ベータ・アルビレオ恒星系。

 地球から三百八十五光年の距離にある。

 ここに来たのは《リゲタネル》の武装をテストするためだった。

 ここを選んだ理由は比較的交通量が少ない事と、ワームホールの出口付近に標的に使える小惑星が多かったから。

「あの程度の岩も蒸発しないようではちょっとねえ。……まあ、牽制ぐらいにはなりますか」

 そういう言い方あるかよ。

 このレーザー砲取り付けるために《リゲタネル》は四機のプロペラエンジンのうちの二機を外したんだぞ。

 まだ二機残っているから、大気圏内航行は可能だけど。

 ただ、教授に言わせればプロペラは自分の趣味で付けただけで、別になくてそれほど困らないそうだが。

「不満なら、もう一種類レーザーがあるぞ。船長。横にあるGのボタンを押してくれ」

 これかな?

 あたしは言われた通りGと書かれたボタンを押す。

 しかし、Gって何の頭文字だ?

「今度はあの岩がいいじゃろ」

 教授が示したのは直径二十メートルほどの小惑星。さっきのより大きい。

 あたしは慎重に照準を付けてトリガー押した。

 な!? 小惑星は一撃で消滅した。

「これは小型対消滅炉に少し手を加えて作ったグレーザー砲じゃ」

 そうか。Gはガンマ線レーザー、通称グレーザー砲の頭文字だったのね。

「素晴らしい。これなら満足ですわ」

「ただし、グレーザー砲のエネルギーは本来タキオンビーム用の反物質を使っている。無闇に撃つと反物質の蓄積に時間がかかることを忘れんでくれよ」

 その前にこんな物騒なものを使わないで済ましたいわね。

「これの他に対レーザーシールドガスの放出装置を付けておいた。まあ、気休め程度にはなるじゃろう」

 射撃テストはこれで終了することにして、あたし達は一度、《楼蘭》に帰還した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る