眩い光のその影で
冷たい床に寝たせいで若干腰が痛くて腰をさすりながら起きてくるとフェルマがおはようと言ってコーヒーを出してくれた。
「そうだ昨日荷物を確認してたら忘れ物があったぽいんだ」
「あらそうなの、その城私も行ってみていい?」
「フェルマも来る?」
「あの城の話、私多分知ってるから」
「何があったの」
「あそこって昔ね……」
言いかけたフェルマが男たちが入ってきて押しのけられると、話の続きを聞きそびれたままバードたちは城に引き返した。修道女がまだいて、帰ってこられたのですねと言って微笑んだ。
「この人は何かあったのか知ってるぽいから」
「あら可愛い修道女さんね」
「聞いても?」
「この城の持ち主は雇われ城主でそれこそひどい圧政を民衆にしいたの、贅沢なパーティーの日怒った民衆が刃物をもって貴族たちを殺しに来たのよ」
「ではあの肖像画の男の子もその時殺されたのですね」
肖像画と聞いてあいつのことかとバードは思った、絵の中に佇む美しい貴公子。
「ではここを浄化いたします」
「じょうか?」
錫杖をついて浄化の儀式を始めると、なにやら天候が怪しくなってきて雨が降り出していた、
「慈悲深き神よ、彷徨う魂たちを……」
そう唱えると、一斉に光の環が城を包み一瞬ここが貴族の館だったらしき情景を映し出していた。骨から魂が抜けだしその光の環の中に閉じ込められて行ってつたっていた蔦が消え去り、血の染みが消え、その驚きの光景をバードとフェルマとエミリは目撃していた。
「ふう、ここはもう安全です」
修道女がそういって微笑むと奇跡ってあるんだねとエミリは目を輝かせて言った。
「すごい……」
フェルマはぼうっとその様子を眺めていた。
「なあ神様が本当にいて……奇跡を起こせるっていうんなら俺たちはどうなるんだ」
バードは悲しげにそうつぶやいた。
「盗賊稼業に身をやつして、盗みや人殺しをしている俺たちは地獄にいくのかよ!」
そういって修道女に詰め寄ると、修道女は寂しげに、神はすべてを許して下さることもありますと言って慰めた。
「今からでもあなたが悔いを改めるというのなら」
「俺たちはどうなってしまうんだよ……もがいて生きていた、食べるために何でもした運命を呪って生きてる俺たちに神様は何もしてくれなかったのに!」
そう言って地べたに座り込んでバードはおいおいと泣き続けた。何のために出る涙なのかはよくわからなかった、こんな運命を与えてくれた神様を呪っていたからかもしれない。雨がバードの体を冷たく濡らした。泣いていたことをごまかしてくれているようであった。泣き崩れたバードの傍にずっと修道女がいてくれて、バードはそこに何かの光を感じ取っていた。そこに見えた光はただの幻だったのかもしれないし、今となっては何を感じ取ったのかよく思い出すことはできなかった。
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