第4話 おともだち
「まこと…」
双子のアオよりも早くに起きて来たギンが、目を擦りながらリビングにやってきます。
「ギン?おはよう、いつもより30分も早いよ?」
「うん…」
「おいで」
「ん」
俯いて口を引き結んでいるギンを、マコトは手を広げて呼びます。
「何かあったかな?」
「うん…あのね」
勢いよく顔を上げたギンの瞳には、薄っすら涙の膜が張っています。
(そういえば昨夜風呂の時にもギンは何か言いたげな表情をしていたっけ。
少し元気がないな、とは思っていたのだけれど…)
「あのさ、とられちゃうんだ」
「取られちゃう?何をかな?」
「あお…」
「アオに何か取られたの?」
「ちがうの、あおをとられちゃうの…」
「ええ?」
「あお、おれよりけんちゃんとあそぶとたのしいって…」
「アオがそう言ったの?」
「ん、と…けんちゃんとあそぶとたのしいっていった」
「そうかぁ」
「けんちゃんにあおをとられちゃう…」
ポロポロ涙を零すギンを、マコトは目を細めて眺めます。
「けんちゃんね、あおをわらわせるんだ」
「へぇ、笑わせるの?どんなふうに?」
「きのうはね、こーとをまえとうしろとはんたいにきてあおのとこでおどったんだ。
あおすっごくわらって、けんちゃんおもしろい、すきーって」
その程度で笑えるなんてさすがアオ…と思いつつ、マコトは先を促します。
「きのうのまえはね、うんどうのときのたいいくぎのズボンをあたまにかぶってたし、そのまえはあおのおどうぐばこのなかにけんちゃんのかいたおばけのえがはいってたの。
あお、きゃっきゃってわらった」
「ギンもよくアオを笑わせてるだろう?
アオ、いつも楽しそうだよ」
「うん、おれ、おもしろいんだ!!」
涙で濡れた瞳を輝かせて、自慢気ににっこり笑うギンの頭をそぉっと撫でながら、マコトは言います。
「それなのに心配なの?」
「…だって……あおをわらわせるのはおれだけなのに…」
「ああ……ギン…大丈夫だよ」
「だいじょうぶぅ?」
「アオの1番はいつだってギンなんだからね」
「ほんとぅ?」
「本当だよ」
「うん…そっかぁ」
「ところで、ギンはケンちゃんとは仲良しじゃないのかい?」
「ううん、なかよしだよ、おともだち!」
「そうなのかぁ」
「うん……あ、あおにはしぃっ、だよ。
おれがけんちゃんのこといったっていっちゃダメなんだからな!」
「ああ、言わないよ。
さあ、部屋へ行ってアオを起こしておいで。
目が覚めてギンがいなかったら泣いてしまうよ」
「うん!あいつ、おれがいなきゃなんだ」
てててっと子ども部屋に走っていくギンを優しい笑顔で見送るマコトに、ベビーシッター兼ハウスキーパーのメグムがコーヒーを差し出します。
「ケンちゃんて、どんな子なんでしょうねぇ…」
「そうだねぇ…
次の保育参観には君も一緒に行くかい?」
「え、いいんですかぁ?
ケンちゃんにも、幼稚園での2人にも興味あります」
「ふふっ、では、一緒に…」
保育参観が楽しみな2人です。
ケンちゃん、どんな子でしょうね。
おしまい
万能ベビーシッターのお仕事 かのん @kanonkameno
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