6話〜Scramble
「はい、という訳で転校生よ。この夏期講習から参加する事になりました。柊未来さんです。柊さん、自己紹介よろしくね。」
「はい。」
西川先生の紹介に柊はそう答えると教卓の前に立つと、すっと俺にむかって指を指すとまるでなにかに挑戦する様な表情で。
「柊未来です。あそこにいるげん……須藤幻の魔女になるためにここに来ました。よろしくお願いします。」
それを言うと教室がざわざわとする中、柊はまるで何も聞こえなかったかのように空いてる席……。って。
「なんで俺の隣が空いてんだ!?」
おかしい。昨日までは確か木下君が座ってたはずの席が空いてる。そのかわりに木下君はなぜか空いてる席の後ろに席が出来ており、そこに座ってる。
驚く俺を見て西川先生は楽しそうに。
「あら?昨日ね、転校生が来るから木下君、席を後ろにしてもらったの。ありがとう木下君。」
木下君はぺこりと頭を下げるのを見て俺はいやいやと手を振りながら。
「おかしい!だったら他の人でもいいだろ!」
「幻。ワガママ言っちゃダメだよ。それとも照れてるの?幻ってば本当に可愛い!」
「黙れ!柊!」
「幻ちゃん。貴方、成績はいいのに他人とのコミュニケーションが壊滅的だから柊さんとコミュニケーションを取りなさい。それで人間関係を学ぶ事!」
「西川先生まで……。」
そのやり取りを見てクラスから笑いが零れた。それを聞いて西川先生も笑いながら。
「それじゃあホームルーム終わるわよ。今日の夏期講習は選択授業のテストだから。準備ちゃんとするように。」
ホームルームが終わり、柊はクラスの人にいろいろ声をかけられていた。それをチラッと見る。
……なんだかんだ柊は可愛い方の部類に入るのだろう。銀髪ロングの髪が綺麗で、タレ目が人懐っこさをだしている、クラスの人の質問にニコニコしながら答えていた。そんな柊の笑顔がとても眩しかった。
一通り話が終わったのだろう。今度は俺に向かって。
「げーん!選択授業は何を取ってるの?」
「……。」
ヘッドフォンを付けているので何を言ってるのか分からないが俺は授業の準備をし、無視を決め込んでいると柊はむーと頬を含ませた。
「そーゆーことしてると……。」
再びヘッドフォンを取ろうとしてきた柊対策にヘッドフォンを手で掴むと柊はヘッドフォンではなく教科書を取ってきた。俺は慌ててヘッドフォンを外す。正直、人がいてなおかつ授業間のこの時間にヘッドフォンを外すのはなかなかに辛いが仕方ない。
「あ!お前は盗賊か!」
「へへん。取られる方が悪いんだよ。」
柊は得意そうに俺から奪い取った教科書の表紙をじーとみると。
「えーと……どれどれ。
……うん!やっぱり音楽なんだね!さっすがー幻!」
「……悪いかよ。」
「ううん!悪くないよ!むしろいいよ。幻らしいね。」
そう言って柊は教科書を俺の机に置いて、クルっと回ってニコニコすると、とある質問をしてきた。
「歌は歌わないの?幻は。」
「歌?」
「うん。歌わないのかなぁって。幻ってイケメンだからきっとイケボなんだろうな!」
「歌か……。」
俺は少し考え、肩を竦めて。
「あんまり歌わないな。」
「そうなんだ……。」
するとなぜか俺たちの間に気まずい雰囲気が流れる。柊はその雰囲気を壊すようにニコニコして大きな声で。
「契約したら歌、聞かせてよ。」
「歌?」
「うん。よろしくね。幻。」
柊はそれを言って教室から出ていった。俺はふとなぜかデジャブを感じた。
「前にも……あったような……?」
首を傾げて俺はヘッドフォンを再び付けると音楽室へとむかって歩き出した。
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