7話〜契約
そうして授業を適当に受け流していくと問題の時間がやってきた。……契約の時間だ。
「それじゃあ契約を行っていくけど。やり方は分かるわよね?」
西川先生がそう言ってきたので俺はああ、と答えた。柊はとても緊張した面持ちだ。
「そう?一応簡単に説明しておくけど。この契約の
……後は貴方たち次第ね。」
「ああ。大丈夫だ。」
「幻……。」
柊が俺の隣にやってきた。その肩は少し震えていた。……なんだかんだ言って怖いのだろう。確か自分の中身が開発される感覚なのだから。
俺は少し頭を掻いて。
「柊、だいじょ……」
「やったあああああああああああああああああああああああああああ!ついに幻の魔女になれる!やった!やった!」
「……。」
少しでも心配した俺が馬鹿だった。俺はもう一度頭を掻いて。
「なあ、柊。」
「ん?何、幻?」
「お前さ、不安にならないのかよ。その……感覚とかヤバいんだろ?」
そう聞くと柊はニヤーっと笑って。俺の周りをクルクル回りながら
「あれー?幻、ひょっとして私の心配してくれてるの?本当にツンデレだね?幻。」
「……もう、ツッコミ疲れた。」
「大丈夫だよ。幻。」
クルっと一回転して俺の目の前に立ち、俺の両手を掴んで。
「私は逃げも隠れもしないから。なら賭けをしよう?幻。」
「……賭け?」
「成功したら蜃気楼のパンケーキ奢ってね?」
「あのなぁ。」
「大丈夫。私が勝つから。」
その真っ直ぐした瞳で見つめられて俺は黙るしか無かった。それを見てゴホンと咳払いして西川先生が俺たちに向かって。
「それじゃあ、いいかな?ふたりとも。」
「……大丈夫だ。」
「大丈夫よ。」
2人は契約の
「
「
「
「
幻のその提唱を聞いて、私が提唱した瞬間。目の前が真っ白になった。
そして周りを満たすのは音、音、音。いや……聞こえるの大音量の歌だ。歌が私の中に染み込んでいく感覚を覚える。まるでライブ会場のスピーカーの前で直に聴いている感覚。
「……っ!」
これが幻の世界。音がまるで物質として目の前を飛んでいく。この言葉の地獄の中に幻はいたのかと考える。でも……。
もう大丈夫だよ。幻。私が貴方の魔女になるから!
そう思った瞬間。今度はガラリとまた世界が変わった。そうして染み込んだ音が私の全てを開発していく。
「あ……、あっ……あっ……!」
頭が割れるように痛い。染み込んだ音がまるで出口を求めるかのように私の中を掘り進める。自分の中がまるで開発されるようだ。どんどん意識が削れて行く中で私は考える。
あと少し……。あと少し……。
そうしてその音の暴力に目をつぶっていたがその音の中から声が聞こえてきた。
「……ぎ……!ひ……ら……!ひいらぎ……!柊!
柊!」
ゆっくりと目を開けてその音を掴む。しかし掴んだのは音ではなく……。
幻の暖かい手だった。
「柊!」
俺は崩れ落ちそうになる柊の身体を支えようとするとその前に彼女は俺の手を掴んできた。そしてゆっくりと目を開ける。
「……げ……ん……?」
「成功だよ。俺の負けだな。」
俺たちの周りにはまるで契約を歓迎するかのように様々な音符が浮かんでいた。
今の俺には分かる。きっと柊にも分かっているだろう。
俺たちの鉄脈術は音を物質化して操る鉄脈術だということを。
「1発で成功したわね!お疲れ様。ふたりとも。」
西川先生が駆け寄ってきて笑顔で迎えてくれた。俺は頭を掻いて。
「……分からないけど何故か成功しそうな気がした……。」
「あら?そうなの?」
「なんでだろうな。」
柊は少し落ち着いたのだろう。俺の手を離すと。
「げーん。どうだ!私が幻の魔女だ!有言実行の魔女なのだ!」
「……。ああ、そうだな。」
「!?幻が褒めた!もっと褒めて!私大変だったんだよ!頭はガンガンするし……なんかそのエロい感じになるし。」
「……ああ。お疲れ様。」
「んじゃ……。」
そうすると柊はいきなり俺に向かって両手を広げて飛びついてきた。
「!?
抱きつくな!」
「げーん!これからよろしくね!」
「分かったから!」
「照れてるの?」
「うるせえ!シバくぞ!」
遠目で西川先生は笑って見ている中、俺は柊に抱きつかれながら頭の中に刻み込まれた提唱を思い返していた。
我が歌は世界を変える
そして、視界はもう言葉はなかった。
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