5話〜夢の中

次の日。聖玉学園にて。


「……。」


ヘッドフォンを付けていつも通り夏期講習で登校をした俺は正門の前に昨日見た銀髪の爆弾娘、柊未来を見つけてしまったので「裏門から入るか……。」と考えているとその爆弾娘に見つかってしまった。


「あ!幻!おはよー!元気にしてた!元気かな?元気だよね!あ、ヘッドフォンしてるから聞こえないか!」

「……。」


昨日、あんなに深刻そうだったのに1日で変わるのか……。俺はなんか言ってるだろう元気そうな柊を無視して正門に入ろうとすると目にも止まらぬスピードで俺の正面から一気に背後に回るとヘッドフォンを奪い取られた。


「はーい!おはよー!元気?幻!」

「あ!ヘッドフォン返しやがれ!そしてうるせえ!」


その瞬間、音が視覚となって現れる、いきなりのことで驚いたが奪い取られたヘッドフォンを取り返そうとすると柊はすっと服の中にヘッドフォンを隠した。


「はい、ヘッドフォン無くなっちゃった。げーん。私の話を聞いてくれる?」

「いきなり俺の物を強奪しやがった奴に聞くことなんてねえ!さっさと返しやがれ!」


そう言い放つと柊の服に手を突っ込もうとした所ではっと我に帰って周りを見ると周りの生徒達がざわざわとして俺たちを見ていた。


あれ、須藤じゃね?

あの女の子の服の中に手を突っ込もうとしてたわ……あの子可哀想……。

先生呼んだほうがいいんじゃね?


相も変わらずその声は見えるので俺はうっとなって柊を見ると、柊はしてやったりという顔で。


「あれ?幻どうしたのー?ひょっとして私の服の中に手を入れようとしたの?やだ!げーんのエッチ!」

「コイツといるとろくな事がねえな!」


そう言って柊の手を引っ張っていく。なんか後ろから言われてるけどそれは無視して学校へと入っていく。そうして柊の手を掴んだまま教室に着くとクラスにいた生徒はぎょっとしながら俺たちを見てきた。

それを見て柊はニコニコしながら。


「あれ?幻。なんで私のクラス知ってるの?」

「昨日西川先生がどーのこーの言ってたからな。どうせ俺のクラスに転校してくると思ったんだ。

……って早く俺のヘッドフォン返しやがれ。」


掴んだ手を離してそう言うと柊はニコニコしながら俺を見てきて。


「それじゃあ私の話を聞いてくれる?」

「……ああ、それでヘッドフォン返してくれるのならな。」


それを聞くと服の中からヘッドフォンを出す。そうして俺の胸元にヘッドフォンを突きつけると。


「私、本気だから。」

「は?」

「幻の魔女になるって、絶対になってやるってそう『決めて』ここに来たんだから。それを忘れないでね。」


そう今度は柊が真面目な顔で言い放つとまたニコニコしながら。


「そういうことだから!幻。よろしくね?それじゃあ西川先生に用があるから職員室に行ってくるね。バイバイ!」


するとまるで忍者のようにさっと柊は廊下に出ていった。

……なんか、懐かしいな。


「懐かしい?」


自分で今思ったことに少しだけ驚いた。あの柊とのやり取りが懐かしかった。


「……。」


俺はさっき受け取ったヘッドフォンを再び付けると1番後ろの席に座る。

そうして俺はヘッドフォンのタイマー機能を付けるとそのまま机に突っ伏して惰眠を貪ることにした。











夢を見た。

1人の少女が俺に笑いかけてくる。笑ってるのは分かるのに顔がまるでクレヨンで塗りつぶされたようになっていて見えない。


「ねえ?幻、私、大きくなったら幻の魔女になるからね。」

「ーーー、魔女って身体大きくならないよな?」

「幻はそうやってすぐ揚げ足とるんだから。幻はどうなの?」

「……そうだな。ーーーとならいいかもな。」

「ホント?それじゃあ、その気持ちを歌ってよ。」

「ん?いいぜ。」

「本当に?それじゃあ私、幻のアコギ持ってくる!」


……知ってる。そっちに行ったら……。

ーーーと離ればなれになることを。


待て!そっちに行くな!


その瞬間周りが火の海になっていた。そしてあるのは……。

燃えた自分のアコースティックギター。そしてその周りには血が飛び散ってる。


「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」









ピピピ、ピピピ、ピピピ……。


「……。」


アラーム音で目覚める。何かを見ていた気がするが夢特有の記憶にモヤがかかって覚えていない。

ただ自分の頬に涙がつたっていた。


悲しい夢でもみていたのか?


そう考えていると西川先生と柊が入ってきた。どうやら転校生の紹介をするらしい。柊がこっちに向かって手を振っている。

俺ははあ、とため息を吐き、ヘッドフォンを外すとちょうど朝のホームルームが始まった。

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