第6話 可愛いに囲まれる一日
「ぁゎゎゎゎ……」
なんで演劇部なのに教室でやるのだろうって疑問を抱くべきだった。いや、書道部とかは放課後の教室でやってるから演劇部もそうなのかなって思っちゃっただけで、そもそも演劇部が無いのは予想外だった。
綺麗で可愛い女の子が二人私を挟んで座っている。学年は一つ上なだけだよね? なのにこの大人な雰囲気と魅力。ヤバい……推しそう。
「ボクは天日 幸(あまび こう)。よろしくね!」
金髪の先輩がニコッと微笑んで私の手を握った。眩しすぎる笑顔で意識が飛びそうになるし、手を握られた時の緊張で血液が沸騰しそうだった。
「私は望無 芽亜(もちなし めあ)。よろしくね」
こっちの先輩もめちゃくちゃ可愛い。そんな言葉通り両手に花の状態だ。私も二人のこともう少し知りたいな。
「忘れてたっ!! 春香ちゃんと約束してるじゃん!!」
天日先輩が勢いよく立ち上がると、望無先輩の腕を掴んでもの凄い勢いで教室を飛び出して行った。しばらくの間、何があったのか理解出来ずにその場に座っていたけど、やる事も無くなったし桜ちゃんの所に帰ろう。
「演劇部はどうだった?」
相変わらず私の推し二人が桜ちゃんの両隣に座って腕に抱き着いている。そんな光景に羨ましさを抱きつつ平然と話す。
「演劇部なんて無かったよ」
「大丈夫? 体震えてるよ?」
やばい。めちゃくちゃ好きな有名人が目の前に居るんだ。しかも、仲の良い友だちと腕を組んでいる。そんな非日常が受け入れられないって言うか、嬉しすぎるって言うか。
「あ~うん……そろそろ限界かも」
大きく息を吸って部室の隅で推しのライブをこっそりと見る。何かで気を紛らわさないと抱きしめたい欲が消えないから。
「それ、私のライブ?」
「星月さん!?」
スマホの音量はゼロだし、絶対にバレないように見ていたはずなのに。ていうかほんの少し前までは桜ちゃんの隣に居たのに、一瞬で私の後ろに立っていた。推しが私の後ろに立っている。
「ぁゎゎゎゎ……」
「もしかして私の……」
「大ファンです………ずっとずっと大ファンです……」
恥ずかしさで顔が沸騰しそうだった。でも、やっと言えた。自分の思いを自分の口で言えた。
「ありがとっ!!」
何の前触れもなく抱きしめられると声も出ないし体も固まって動かない。推しに抱きしめられてるという耐え難い非現実が襲ってきた。これはいけない。私の尊いゲージ限界突破してしまう。
「迎えに来たぞ? 月奈?」
「日向……私、幸せだった……」
幸せ過ぎて意識が飛んでしまう……あぁ、推しの腕に包まれて死ぬのなら私は……
「月奈っ!? おいっ!! しっかりしろっ!!」
まさか嬉しすぎて意識が飛ぶとは思ってなかった。目が覚めたら日向の家に居て、辺りを見渡しても誰も居なかった。机の上には手紙が置かれていて、『ちょっと買い物行ってくる』と殴り書きされていた。
「はぁ……ビックリしたなぁ」
今日は可愛い女の子に囲まれる一日だった。凄く凄く幸せな一日だった。日向が帰って来るまでの間、もう少し余韻に浸って居よう。
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