第五話『波乱の謁見』
「名を述べよ。」
ウルズ様に見惚れていると、彼女の隣に立つ小人の老人にそう言われた。
「一瀬 護です。」
「イチノセ・マモル…珍しい名前じゃな。マモル、お主が犯した罪は何か分かっておるな?」
ーー答えるのめちゃくちゃ恥ずかしい…答えた方がいいのかこれ。
護は答えることを渋ろうとしたが、言うことを聞かないで『即死刑』となるよりマシだと思い、老人の問いに答えた。
「ま…街中で下半身を露出していました…。」
周りからクスクスと笑い声が聞こえる。玉座に座っているウルズ様も手で口元を隠しながら笑っている。その姿すら美しい。
「なぜそんなことをした。」
再び老人に問われた。護は一番聞かれたくない質問をされてしまった。素直に「気付いたらそこにいた」と答えても信じる人は確実にいない。しかし、嘘をついてどうにかはぐらかしても、その後に嘘だったとバレてしまったときに、どんな罰が待っているかわからない。
ーーここは素直に答えて、ワンチャン誰かが信じてくれることを期待するか…。
護はその時に起きていたことを正直に吐こうとした。しかしそのとき、護が王の間に入るときに通ったあの巨大なドアが再び開いた。
ドアが開いた先に目を向けると、そこには怪しげな男、護をこの世界へと召喚した張本人『エクトル・ガスパール』が立っていた。
彼は一礼して王の間に入った。そして入ると同時に、付けていたピエロのような仮面を外した。
護は思わず目を見開いた。ガスパーの仮面の下の顔はとても綺麗だった。護は男性に『綺麗』と思ったのはおそらくこれが初めてだった。目は切れ長だが、どこか柔らかい印象を与える。鼻筋がスッと通った綺麗な高い鼻をしており、唇は薄く、眉もしっかり整っている。
ーー今の時代じゃブランドのモデルとかやってそうな見た目してるなこいつ…。あんな怪しそうだったのに仮面の下はイケメンで高身長とかどうなってんだよ…。
スタスタとこちらに向かって歩いてくるガスパーの姿はまるでファッションショーのようだった。
彼は護の横を通り、そのままウルズ様の玉座へ続く階段の目の前まで来た。そして周りの者がしているように跪き、こう言った。
「我らが王、ウルズ様よ。彼の愚行をお許しください。全ての原因はこの私、エクトル・ガスパールにございます。」
王の間にざわめきが起こる。「なんでガスパーさんが」という声も聞こえた。
再びウルズ様の隣に立つ老人が口を開く。
「ガスパーよ、なぜお前とあろう者がこいつを庇うのだ。お前はこのウルズ王国の騎士団であり魔法騎士長だろう。」
ーー騎士団!?魔法騎士長!?あの見た目で!?絶対王国側の敵と思ってた勝手に!待て待てききたいことが山ほど増えたぞ!元々めちゃくちゃあったけど!
護は驚きながらも沈黙を守っていた。なぜなら先ほど、ガスパーが護の前を通り過ぎる際に小さい声で「マモル君はちょっと黙っててね」と言ってきたからだ。なにが起こってるか分からない護は、ガスパーの言うことを守ることしかできなかった。一連のことが終わったら色々問いただしてやろうと決意する護であった。
ガスパーは先程の老人の問いに答える。
「もちろんしっかりとした理由はございます。しかし大衆の面前で申し上げることではございません。いずれ来たる時に騎士団の皆には伝える時がくるでしょう。今は私とウルズ様とこのマモルの三人だけでお話しする機会を頂戴したく思います。」
ーーえ、すごい速度で話が進んでるんだけど、俺置いてきぼりなんだけど、黙っていた方がいいの?これ。
「そんなこと許されるわけなかろう。お前だけならまだしも、その下衆野郎とウルズ様を同じ空間に居させることなどできるわけなかろう。」
ーーすごい言われようだな俺。
「待って、ワルター。」
ウルズ様が口を開く。どうやら小人の老人は『ワルター』という名前らしい。
「私は構わないわ。ガスパーのことだもん、なにかちゃんとした理由があるんだわ。」
「ですがウルズ様…。」
「私は大丈夫、話をさせて。いざとなったらガスパーもついているわ。」
「ウルズ様がそう仰るなら…。一時間半後にその場を設けましょう。それでよいか?ガスパーよ。」
「はっ、感謝致します。」
ーーひとまず俺の死刑宣告は免れたようだ。それについてはガスパーに感謝するところだが…
「マジで話についていけねえ…。」
今晩のオカズを探していたら異世界召喚されたんですけど。 @tkns_syo
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