第42話 霊符
私の家には、百家くんの伯母さんが、百家神社の巫女としてお祓いのアルバイトに一緒に来て欲しいという話を前もって連絡してくれていたのでスムーズに家から神社に行く事が出来た。
だけどお祖父ちゃんはすごく心配してくれていた。
「ほんまに大丈夫なんかのぅ、夜になるのにしんぱいじゃのぉ」
なんかオロオロと家の中を右往左往しているのを見ると申し訳なくなる。
「百家さんから責任を持って翌日の朝に送り届けますという話だったし、麻美が行くっていうんだからしょうがないわよ、お父さん」
お母さんがそう言ってくれたので、しぶしぶ頷いてくれた。それにしても、お母さんがやけに協力的なのにはちょっと引っ掛かるけど、まあ今から大仕事があるから気にしていられない。
「お祖父ちゃんごめんね、心配させて。でも付いて行くだけだし、大丈夫だよ。安心して寝ててね」
そう言って家を後にする。
百家神社に着くと巫女の衣裳に着替えた。着替えを百家くんのお母さんと伯母さんが手伝ってくれた。
コンタクトレンズにして髪は後ろで一つに纏めた。
「わあ、麻美ちゃん、まるで絵にかいた天女みたいよ、本当に綺麗ねぇ」
「ほんとねえ、斜陽にはもったいないパートナーね」
女性二人に似合うと褒めちぎられ恥ずかしかった。
まあ、パートナーっていうのも彼の霊力増幅器みたいな役目を持つ意味だろうから、深くは突っ込むのやめておこう。でないと自分がおこがましくて身の置き所がなくなる。
その後、二人で部屋で休憩する事になった。今夜の説明も百家くんがしてくれるそうだ。
霊符とは陰陽師だけでなく密教僧や修験者も使っていたらしい。
もとは神仙道や道教の
それは神々と特定個人の契約関係を表す割符が護符となったというものらしいけど、そういうのをちょっと聞いただけではよく分からない。とりあえず聞き流す事にした。
とにかく、江戸時代にも陰陽道は民間呪法でもてはやされ、お札も盛んに取り入れられたらしい。例えば、
東方寳柱菩薩乃至入地
第會東方南方法戈戈菩薩
乃至入地第會西方北方
虚空性菩薩乃至入池大會
北方六法亦復如是乃至無
量音樂中央護舎曳功徳乃
至般若波羅蜜門戸守護符
↑家を守る護符 仁王経 家の北から四方位に貼り付ける
山
■■■
日日日
日日日
◇
〇
急
如
律
令
↑霊符 化生が通る道を封じる札
【〇急如律令】というのは 勅令を速やかに実行せよ、という意味。これを文末に置くのが日本では一般的なのだそうだ。
ありそうだけど日本では使われていない漢字を奇妙に組み合わせたような秘文字を使った霊符と
前に尾根山君の石事件の時にちょっと触れた陳宅霊符の、線と〇を繋げて作ったような不思議な霊符も混ざっている。有名な鎮宅七十二霊符という七十二の厄災から守ってくれるという護符にあるような霊符だ。
それを神職の常装である狩衣に着替えた百家くんが手で触れると不思議な事に全てが消えて行った。
「え、消えた・・・どこに消えたの?」
「秘密、と言いたい所だけど、う~ん、白狐のドラえもんのポケットみたいな所?」
「はぁ?」
思わず不機嫌な声を出してしまったが、白狐は私の前に突然姿を現すと、前にやってくれたみたいに肩に飛び乗り冷たい鼻スタンプを私の額に押し付けたのだ。
すると急に身体が涼しくなった。あ、これ好き。
『ヨメのメンド-みる』
「は?ヨメ?」
なんか、変んな狐の言語が聞こえたような気がした。これまで『きゅいーん』としか聞こえなかった狐の声が言葉に聞こえるとは・・・?
ジロリと百家くんを見ると、ガシガシ頭を毟って言った。
「あ~、多分、それは、う~ん、そう、『称号』だ」
「称号って・・・あの、ゲームで出て来るみたいな?」
「そう!それっ」
「称号もらったら、なんかいい事あるの?」
すごく胡散臭い感じがして思わず聞いた。
「そりゃあるさ、白狐の言葉は聞こえるし、守護される。あ、今も涼しくしてもらえただろ」
そこで、なんでそういう事になっているのかとか疑問はいっぱいあったけど、今から東神家に行かなければならない。守護はもちろん欲しいし、涼しいのはありがたい。巫女の装束なんて着てたら汗だくになるはずだ。
「ふぅん。まあいいや。それで、私は付いて行って東神家でどうしていたらいいの?」
※■◇〇記号は使われていない文字
※神仙道:神道の神を祀る日本流の仙人の道
※道教:漢民族の伝統的な宗教
※
※符籙:中国,道教修行者が身につけていた秘密の文書。符とは,元来は身分を証明する割り札である。道教ではそれに呪文を記して守り札とした。 籙は天官や神仙の名簿であり,すべて白絹に書かれた。すでに『隋書』「経籍志」に符 籙の重要性は説かれ,天子が即位するごとにこの符 籙を授かることにした王朝もあった。符 籙を身につけていると,邪を払い,治病に効能があるとされる。
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