ムクゲの花
はみがき
WC
同じ色の人を探してきた。
僕には、物が、数字が、音が、人が、それぞれ色づいて見える。こういうのをなんと言うんだっけか。忘れてしまった。数字にそれぞれ色が見える人の中には、計算が苦手な人がいるらしい。それは、見えている色と計算結果に差異があるからだという。例えば、5が濃い緑、3が黄色、8が赤に見えている人にとって、5+3=8の計算式は成り立たない。これを聞いたとき、世の中には大変な人もいるんだなぁと思った記憶がある。僕のそれは、そこまで強力なものではない。簡単に言い表すとしたら、「対象物のその日のイメージカラー」を見ることができる程度ものだ。僕のこれは、言ってしまえば、自分勝手な解釈から作られた、色の変わるサングラスでしかない。
それでも、色を見て安心したし、焦燥したし、落胆した。
同じ色の人を探している。
人は他人に共通項を見つけたがる。血液型とか、家族構成とか、趣味とか、好きな食べ物とか、よく聴く音楽とか、恋愛事情とか、モノの考え方とか、捉え方とか、
そういうものに共通項を見出そうとする。そして、"そういう"共通項が多ければ、気が合う人として認識するようになるのだろう。
僕は、"気の合う人"を探している。
僕と同じ色で、僕の色を承認してくれる人を探している。
ただ僕は、同じ色の人を探していた。
"気の合う人"同士がすべての場面で、意見が合致したらすごいと思う。それと同時に、つまらないと思う。
僕は単純だから、言わずとわかる関係に惹かれる。
『お互いに、すべての場面で意見が合うわけではないことを強く理解している。その上で、節々にある共通項に自然と気づく。そういうのが、本当の、気の合う人、との出会いなのかもね。』
1年くらい前に、裏アカウントでしたツイートを思い出した。
もう答えはとっくに出ていた。
「同じ色」を求める必要はなかった。
数字の7も、朝の都会に向かう電車も、妙に前向きなバラードも、ラの♯も、
これまで避けてきたあの子も、
合わないと感じるクラスの奴らも、
いつも一緒にいるあいつらも、
一度も"気が合う"と思ったことがないけど大好きなあの人も、
色が違うことに怖がる必要はなかった。
あくまで同じ色の人を、探していた。
ねぇ、
気の合う君は、
今の僕のこと、何色に見えているの?
ムクゲの花 はみがき @__hamigaki
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